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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
「…でも、どれも、とっても美味しいです!リンゴだけじゃ無くって、サ…うちの果物は、なんでも全部すっごく美味しいです…多分!!」
姫は最初「サクナの作る果物」と言おうとしたのを口に出す寸前に「うちの果物」と言い直し、またもやひっそり身悶えしました。
姫がはにかんだ笑顔で口にしたその台詞に、その場にいた全員が一瞬毒気を抜かれました。それから奥方様は苦虫を噛み潰したような顔になり、ローゼルは呆れ顔をし、若奥様は姫に微笑んで頷き、大奥様はくすっと含み笑いをしながら言いました。
「あらあら。困らせてしまったかしら?」
今までにこにこしながら話を聞いているだけだった大奥様に話し掛けられて、スグリ姫の背筋はぴんと伸びました。
「私は、そちらのご当主から、貴女が嫁がれても家業に関わらせる気は無いと聞いていたのですよ。お話が白熱していたので、つい聞き入ってしまって…お止めしなくて、ごめんなさいね」
「いいえ、大奥様。お気に掛けて下さって、ありがとうございます」
姫がお辞儀をすると、大奥様はにっこりと微笑みました。
「ご当主の判断は、賢明な事だと思いますよ。内々の事と外の事は、分けて置いた方が無難ですからね」
大奥様はそう言って、自分の息子の二人目の嫁である奥方様をちらりと見ました。
「どこの家にも、その家なりの流儀が有るものです。よそから口を挟むのは、品のない事ですよ…そうは思わない?」
「ええ。全く余計なお世話ですわ」
「…そうですわね」
ローゼルはつんと言い放ち、奥方様は抑揚無く淡々と大奥様の言葉に同調しながら、新たな果実酒を注ぎました。
「スグリ様。立ち入ったことを伺って、失礼致しました」
「いいえ。こちらこそ、物知らずでお恥ずかしい限りです…そちらは、何のお酒ですの?」
「これは、洋梨のお酒です」
「いい香り…」
奥方様に手渡されたグラスからは、甘い洋梨の香りが感じられました。口を付けると、リンゴ酒と似た質感のさらっとした果実酒でした。
「こちらも美味しいですわね。口当たりがさっぱりしていて、いくらでも飲めてしまいそうですわ」
姫の言葉に奥方様は薄く笑みを見せて、次のグラスを手渡しました。
「洋梨の次は、こちらをいかが?さくらんぼのお酒ですわ」
「ありがとうございます、頂きます」
スグリ姫はさくらんぼのお酒を受け取ってすぐに、眺めも香りもしないで一口飲みました。
姫は最初「サクナの作る果物」と言おうとしたのを口に出す寸前に「うちの果物」と言い直し、またもやひっそり身悶えしました。
姫がはにかんだ笑顔で口にしたその台詞に、その場にいた全員が一瞬毒気を抜かれました。それから奥方様は苦虫を噛み潰したような顔になり、ローゼルは呆れ顔をし、若奥様は姫に微笑んで頷き、大奥様はくすっと含み笑いをしながら言いました。
「あらあら。困らせてしまったかしら?」
今までにこにこしながら話を聞いているだけだった大奥様に話し掛けられて、スグリ姫の背筋はぴんと伸びました。
「私は、そちらのご当主から、貴女が嫁がれても家業に関わらせる気は無いと聞いていたのですよ。お話が白熱していたので、つい聞き入ってしまって…お止めしなくて、ごめんなさいね」
「いいえ、大奥様。お気に掛けて下さって、ありがとうございます」
姫がお辞儀をすると、大奥様はにっこりと微笑みました。
「ご当主の判断は、賢明な事だと思いますよ。内々の事と外の事は、分けて置いた方が無難ですからね」
大奥様はそう言って、自分の息子の二人目の嫁である奥方様をちらりと見ました。
「どこの家にも、その家なりの流儀が有るものです。よそから口を挟むのは、品のない事ですよ…そうは思わない?」
「ええ。全く余計なお世話ですわ」
「…そうですわね」
ローゼルはつんと言い放ち、奥方様は抑揚無く淡々と大奥様の言葉に同調しながら、新たな果実酒を注ぎました。
「スグリ様。立ち入ったことを伺って、失礼致しました」
「いいえ。こちらこそ、物知らずでお恥ずかしい限りです…そちらは、何のお酒ですの?」
「これは、洋梨のお酒です」
「いい香り…」
奥方様に手渡されたグラスからは、甘い洋梨の香りが感じられました。口を付けると、リンゴ酒と似た質感のさらっとした果実酒でした。
「こちらも美味しいですわね。口当たりがさっぱりしていて、いくらでも飲めてしまいそうですわ」
姫の言葉に奥方様は薄く笑みを見せて、次のグラスを手渡しました。
「洋梨の次は、こちらをいかが?さくらんぼのお酒ですわ」
「ありがとうございます、頂きます」
スグリ姫はさくらんぼのお酒を受け取ってすぐに、眺めも香りもしないで一口飲みました。