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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第12章 茶会と果実酒
けれど、今の姫は、もう何も口にしたくありませんでした。
スグリ姫には、自分の中に甘い酒が零れる寸前ぎりぎり一杯に注がれて、縁まで満たされているように感じられておりました。それは、目の前にある現実の酒を飲み干しても減ることは無く、逆に胸の奥の方から湧き出して来て、今にも溢れ出しそうな程でした。
そんな訳でスグリ姫は、自分の中にこれ以上一滴も酒が入る気がしませんでしたし、余計な物はもう一滴も入れたくも無かったのです。
「…似た者夫婦だわねえ」
「え?」
大奥様の発した言葉は突然だったので、スグリ姫は「にたものふうふ」という言葉の音は耳で拾いましたが、意味は頭に届きませんでした。
「お分かりになったのでしょ?」
「お義母様!」
にたものふうふ?と姫の頭が反芻して咀嚼してを繰り返す事で手一杯な間に、大奥様の言葉は続き、奥方様が大奥様に噛み付いて捨て置かれるという、なかなか穏やかではない光景が繰り広げられたりしておりました。
「貴女の感じられた通りですよ。今日お出しした中ではそれだけが、柊屋敷で作られた物よ」
「…ひいらぎやしき?」
先程の「にたものふうふ」がまだ理解できない姫の頭に、「ひいらぎやしき」という、これまたすんなり頭に届かぬ言葉が耳で拾われて追加されました。
「貴女が嫁ぐサクナの屋敷の、昔からの呼び名ですよ」
「なるほど…」
(お屋敷の外を、ヒイラギって言う木が囲っていたわよね…それで、柊屋敷…!)
姫の頭の中で、「にたものふうふ」よりも先に、柊屋敷が解決されました。
「果実酒は、初めてお飲みになったのよね?」
「はい」
「大したお姫様ねえ。この土地の産まれでも、育ちでもないのに…これはやっぱり、娶わせないと仕様が無かったんだわねえ」
「へ?」
「お義母様、それは」
「スグリ様は最初からタンムのお相手ではなかった、という事ですよ」
奥方様が言い募ろうとした言葉を、大奥様は少しも気に留めずに遮りました。
スグリ姫には、自分の中に甘い酒が零れる寸前ぎりぎり一杯に注がれて、縁まで満たされているように感じられておりました。それは、目の前にある現実の酒を飲み干しても減ることは無く、逆に胸の奥の方から湧き出して来て、今にも溢れ出しそうな程でした。
そんな訳でスグリ姫は、自分の中にこれ以上一滴も酒が入る気がしませんでしたし、余計な物はもう一滴も入れたくも無かったのです。
「…似た者夫婦だわねえ」
「え?」
大奥様の発した言葉は突然だったので、スグリ姫は「にたものふうふ」という言葉の音は耳で拾いましたが、意味は頭に届きませんでした。
「お分かりになったのでしょ?」
「お義母様!」
にたものふうふ?と姫の頭が反芻して咀嚼してを繰り返す事で手一杯な間に、大奥様の言葉は続き、奥方様が大奥様に噛み付いて捨て置かれるという、なかなか穏やかではない光景が繰り広げられたりしておりました。
「貴女の感じられた通りですよ。今日お出しした中ではそれだけが、柊屋敷で作られた物よ」
「…ひいらぎやしき?」
先程の「にたものふうふ」がまだ理解できない姫の頭に、「ひいらぎやしき」という、これまたすんなり頭に届かぬ言葉が耳で拾われて追加されました。
「貴女が嫁ぐサクナの屋敷の、昔からの呼び名ですよ」
「なるほど…」
(お屋敷の外を、ヒイラギって言う木が囲っていたわよね…それで、柊屋敷…!)
姫の頭の中で、「にたものふうふ」よりも先に、柊屋敷が解決されました。
「果実酒は、初めてお飲みになったのよね?」
「はい」
「大したお姫様ねえ。この土地の産まれでも、育ちでもないのに…これはやっぱり、娶わせないと仕様が無かったんだわねえ」
「へ?」
「お義母様、それは」
「スグリ様は最初からタンムのお相手ではなかった、という事ですよ」
奥方様が言い募ろうとした言葉を、大奥様は少しも気に留めずに遮りました。