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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
「貴女様にまず必要なのは、当主が貴女様に差し上げる物を、そのまま受け取るという事で御座います 」
「え?」
「都で、イチジクを召し上がられましたか?」
「…ええ」
イチジクを食べた時のことを思い出して、姫の頬は薔薇色に染まりました。
味はもちろん素晴らしく、姿形もとても美しい物でした。その上、サクナと一緒に食べた時のいろいろな事までもが、思い出すと姫を蕩けそうにさせました。
「あれは、貴女様がいらっしゃらなければ出来なかった物です。そして、口うるさい方々を一口で黙らせる程の出来でした」
「え、ぇええ?」
クロウに言われた事が良く飲み込めずに、姫は目を白黒させました。
そんな姫の様子を見て、クロウは姫にも分かるように言い方を変えて姫に告げました。
「サクナ様は貴女様の為に、最高の物をお作りになるでしょう。貴女様には、それを受け取る権利と義務が御座います。遠慮なさらずそれを受け取ったり、味わったりすることが、貴女様の奥方様としての、一番大事なお仕事でございます」
「権利と義務…?受け取るとか、味わうのが、仕事…?」
それお仕事でいいのかしらと姫が呟くと、クロウは、はい、と頷きました。
「そうして下さらないと、困るのですよ。どういうことかは今お話する時間も御座いませんし、私から事細かにお伝えする事でも御座いません。当主が折に触れて貴女様にお伝えするでしょう…が、今申し上げたことは、どうかお忘れにならないで下さいませ」
クロウはそう言うと、来客に対応する為に、深々と御辞儀をしてから部屋を去って行きました。
「姫様」
「バンシル…」
クロウに言われた事が頭の中でぐるぐるしていたスグリ姫は、黙ったまま成り行きを見ながら控えていたバンシルに声をかけられて、助けを求めるようにそちらを見ました。
「頼まれ事も有りますから、とりあえず私達もお部屋に参りましょう」
「…そう、ね…」
「お部屋でお茶をお淹れしましょうね。お昼までは私達だけですから、ゆっくりなさって大丈夫ですよ」
バンシルはそう言うと姫を促して、姫と二人で姫の為に設えられた居室へと向かって行ったのでありました。
「え?」
「都で、イチジクを召し上がられましたか?」
「…ええ」
イチジクを食べた時のことを思い出して、姫の頬は薔薇色に染まりました。
味はもちろん素晴らしく、姿形もとても美しい物でした。その上、サクナと一緒に食べた時のいろいろな事までもが、思い出すと姫を蕩けそうにさせました。
「あれは、貴女様がいらっしゃらなければ出来なかった物です。そして、口うるさい方々を一口で黙らせる程の出来でした」
「え、ぇええ?」
クロウに言われた事が良く飲み込めずに、姫は目を白黒させました。
そんな姫の様子を見て、クロウは姫にも分かるように言い方を変えて姫に告げました。
「サクナ様は貴女様の為に、最高の物をお作りになるでしょう。貴女様には、それを受け取る権利と義務が御座います。遠慮なさらずそれを受け取ったり、味わったりすることが、貴女様の奥方様としての、一番大事なお仕事でございます」
「権利と義務…?受け取るとか、味わうのが、仕事…?」
それお仕事でいいのかしらと姫が呟くと、クロウは、はい、と頷きました。
「そうして下さらないと、困るのですよ。どういうことかは今お話する時間も御座いませんし、私から事細かにお伝えする事でも御座いません。当主が折に触れて貴女様にお伝えするでしょう…が、今申し上げたことは、どうかお忘れにならないで下さいませ」
クロウはそう言うと、来客に対応する為に、深々と御辞儀をしてから部屋を去って行きました。
「姫様」
「バンシル…」
クロウに言われた事が頭の中でぐるぐるしていたスグリ姫は、黙ったまま成り行きを見ながら控えていたバンシルに声をかけられて、助けを求めるようにそちらを見ました。
「頼まれ事も有りますから、とりあえず私達もお部屋に参りましょう」
「…そう、ね…」
「お部屋でお茶をお淹れしましょうね。お昼までは私達だけですから、ゆっくりなさって大丈夫ですよ」
バンシルはそう言うと姫を促して、姫と二人で姫の為に設えられた居室へと向かって行ったのでありました。