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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
「では、行って参りますね」
「うん。よろしくね、バンシル」
姫とバンシルは姫の部屋に戻って来て、姫はバンシルに桃の瓶を渡しました。
「でも、私からバンシルに渡してバンシルが持って行くなら、私が持って行っても良かったんじゃないかしら?」
「他にも何か頼みがあるんじゃないですかね、あちらに行ってから」
ふと思い付いて姫が聞くと、バンシルは淀みなく答えました。
「…そっか。そうね」
(バンシルの方が、おもてなしの役に立つものね)
自分の勝手な想像で、萎れたあとまだ立ち直っては居ない姫に、また少しだけ萎れが追加されました。
「あら?」
萎れた自分をなるべく見せないようにバンシルを見送った姫は、小さな忘れ物に気付きました。
忘れ物と言っても、桃を瓶から出すのに使った、長いフォークのような銀器です。
この家にはおそらく幾つも有る物でしょうから、執務室に届けなくてはいけない物では無いでしょう。
ですが、瓶詰めがこの部屋から無くなった今、この部屋で必要な物でもありません。
バンシルが戻って来るまですることの無い姫は、これを厨房に戻しにいこうかな、と思いました。
(お客様の所に来なくて良いとは言われたけど、部屋から出るなとは、言われてないものね)
姫は銀器を適当な布巾に包んで落とさないように服の隙間に挟むと、部屋を出ました。
部屋を出るとき鍵を掛けるかどうか悩みましたが、居ない間にバンシルが戻って来ると入れないので、鍵はそのままにしておきました。
厨房に向かって歩いていって、廊下の角を二つほど曲がったところで、姫は誰かにぶつかりそうになりました。
「あ、すみません!」
「こちらこそ、失礼…あ」
「え!?ローゼル様!?」
ぶつかりそうになった人物をよくよく見ると、それは、ローゼルでした。
(そっか…一番良い桃を出す事になってるお仕事の大事なお客様って、ローゼル様のことだったのね)
屋敷に招かれた大事な来客がローゼルだと知って、姫は少しだけショックを受けました。
「うん。よろしくね、バンシル」
姫とバンシルは姫の部屋に戻って来て、姫はバンシルに桃の瓶を渡しました。
「でも、私からバンシルに渡してバンシルが持って行くなら、私が持って行っても良かったんじゃないかしら?」
「他にも何か頼みがあるんじゃないですかね、あちらに行ってから」
ふと思い付いて姫が聞くと、バンシルは淀みなく答えました。
「…そっか。そうね」
(バンシルの方が、おもてなしの役に立つものね)
自分の勝手な想像で、萎れたあとまだ立ち直っては居ない姫に、また少しだけ萎れが追加されました。
「あら?」
萎れた自分をなるべく見せないようにバンシルを見送った姫は、小さな忘れ物に気付きました。
忘れ物と言っても、桃を瓶から出すのに使った、長いフォークのような銀器です。
この家にはおそらく幾つも有る物でしょうから、執務室に届けなくてはいけない物では無いでしょう。
ですが、瓶詰めがこの部屋から無くなった今、この部屋で必要な物でもありません。
バンシルが戻って来るまですることの無い姫は、これを厨房に戻しにいこうかな、と思いました。
(お客様の所に来なくて良いとは言われたけど、部屋から出るなとは、言われてないものね)
姫は銀器を適当な布巾に包んで落とさないように服の隙間に挟むと、部屋を出ました。
部屋を出るとき鍵を掛けるかどうか悩みましたが、居ない間にバンシルが戻って来ると入れないので、鍵はそのままにしておきました。
厨房に向かって歩いていって、廊下の角を二つほど曲がったところで、姫は誰かにぶつかりそうになりました。
「あ、すみません!」
「こちらこそ、失礼…あ」
「え!?ローゼル様!?」
ぶつかりそうになった人物をよくよく見ると、それは、ローゼルでした。
(そっか…一番良い桃を出す事になってるお仕事の大事なお客様って、ローゼル様のことだったのね)
屋敷に招かれた大事な来客がローゼルだと知って、姫は少しだけショックを受けました。