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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
ローゼルでしたら姫は面識が有るので、来客に未来の女主人としての挨拶くらいは、しておいた方が良さそうなものです。
ですが、サクナは昨日姫が落ち込んでいた件で、ローゼルと二人にしなければ良かったと言っていました。
それで、姫に顔を出すなと言ったのでしょう。
それは頭で分かっていましたし、体でもよく分かるまで昨日散々あれこれされたのですが、どこかしらがちくっとする気がするのは、致し方ないことで有りましょう。
「…いらっしゃいませ、ローゼル様…」
「…こんにちは、スグリ様」
二人の間に、なんとなく気まずい雰囲気が流れたところに、どこかから人声がしました。
「お嬢様、こんなとこでどうなすっ…あ、お姫さんんんんっ」
「あ!えーっと…ビス…?」
「…カスです、カス」
ケットじゃなくて、と姫が頭の中で考えていたら、姫に声を掛けかけて自分で自分の口を抑えていた本人が答えました。
「カス…だけ?だった?」
「あ。カスだけじゃございやせんぜ、おひ…スグリ様。ただのカスじゃなくて、ビス、カスです。ビスカスです」
「ああ、そうだったわね!ビスカスさんね!」
「へえ、そのビスカスです、スグリ様!」
「何呑気な事言ってるのよ」
二人がほやーっと笑いあっていると、氷のように冷たい声が響きました。
「ああ、お嬢様、すいやせん。なかなかお見えにならないんで、お探ししてたんでさあ」
「お嬢様?ローゼル様とビスカスさんは、お仕事仲間なのでは無いの?」
「仲間?これと?」
「いえいえいえ、滅相もございやせん」
姫が口から出してしまった疑問にローゼルが柳眉を逆立てた瞬間、ビスカスが慌てて口を挟みました。
「ご存知でらっしゃらねえですもんね、スグリ様は。俺ぁ元々、お嬢様のお宅にお仕えしてるんでさあ。それで、お嬢様がこちらでお仕事される時は、雑用係として付いて来させて頂いて…ってのが、こちらでお世話になる最初のきっかけだったんで」
「へえー…そうだったのね…」
姫がビスカスの言葉を聞いて、働いている人にもいろいろな人が居るんだなあ、と感心していると。
「ロゼ。」
背後から聞き覚えのある声がして、姫ははっとして振り向きました。
ですが、サクナは昨日姫が落ち込んでいた件で、ローゼルと二人にしなければ良かったと言っていました。
それで、姫に顔を出すなと言ったのでしょう。
それは頭で分かっていましたし、体でもよく分かるまで昨日散々あれこれされたのですが、どこかしらがちくっとする気がするのは、致し方ないことで有りましょう。
「…いらっしゃいませ、ローゼル様…」
「…こんにちは、スグリ様」
二人の間に、なんとなく気まずい雰囲気が流れたところに、どこかから人声がしました。
「お嬢様、こんなとこでどうなすっ…あ、お姫さんんんんっ」
「あ!えーっと…ビス…?」
「…カスです、カス」
ケットじゃなくて、と姫が頭の中で考えていたら、姫に声を掛けかけて自分で自分の口を抑えていた本人が答えました。
「カス…だけ?だった?」
「あ。カスだけじゃございやせんぜ、おひ…スグリ様。ただのカスじゃなくて、ビス、カスです。ビスカスです」
「ああ、そうだったわね!ビスカスさんね!」
「へえ、そのビスカスです、スグリ様!」
「何呑気な事言ってるのよ」
二人がほやーっと笑いあっていると、氷のように冷たい声が響きました。
「ああ、お嬢様、すいやせん。なかなかお見えにならないんで、お探ししてたんでさあ」
「お嬢様?ローゼル様とビスカスさんは、お仕事仲間なのでは無いの?」
「仲間?これと?」
「いえいえいえ、滅相もございやせん」
姫が口から出してしまった疑問にローゼルが柳眉を逆立てた瞬間、ビスカスが慌てて口を挟みました。
「ご存知でらっしゃらねえですもんね、スグリ様は。俺ぁ元々、お嬢様のお宅にお仕えしてるんでさあ。それで、お嬢様がこちらでお仕事される時は、雑用係として付いて来させて頂いて…ってのが、こちらでお世話になる最初のきっかけだったんで」
「へえー…そうだったのね…」
姫がビスカスの言葉を聞いて、働いている人にもいろいろな人が居るんだなあ、と感心していると。
「ロゼ。」
背後から聞き覚えのある声がして、姫ははっとして振り向きました。