この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
「ローゼルが、大変失礼なことを申し上げました。本人に代わって、お詫び申し上げます」
「え?いえ、そんな?…えっと、別に、全然…大丈夫、です…?」
スグリ姫はぐるぐるがぐるぐるしすぎて周りでどんな会話が交わされていたのか全く分かっていなかったのですが、タンム卿が険しい表情を浮かべて姫に謝罪し、ローゼルが顔を赤くしてそっぽを向き、ビスカスが二人を交互に眺めて俯いて溜息を吐くのを見て、何があったか聞ける雰囲気ではないと悟って、無理矢理色々誤魔化しました。
「えーっと、でも…あのう…」
せめて二人が兄妹なのかどうか位はちゃんと確かめておこうと姫が口を開いた瞬間。
「何だ、これは」
地を這うような威圧感の有る声が、廊下に響きました。
「あ」
「来るなと言っただろう」
(すごく怒ってる)
声の主は、この家の主でした。
彼をこんなに怒らせたのは、99人目のお相手だったタンム卿とのお見合いが流れた直後に、サクナの泊まっていた客室に押し掛けた時以来でした。
けれどその時でさえ、こんなに取り付く島も無いような冷たい態度では有りませんでした。
「…ごめんなさい」
「スグリ嬢を責めるな。引き留めたのはロゼと私だ」
「家の問題だ。口を挟むな」
姫が謝っても何も言わないサクナを見かねたのか、タンム卿が取りなしましたが、一蹴されました。
「部屋に戻れ」
「はい。…でも」
「何だ」
サクナに睨まれて、姫は一瞬背中がぞくっとしました。
(今、『家の問題』って、言ってた)
姫は、睨みつけてくるサクナから目を逸らさずに見返しました。
(ご当主として私に命じた事を私が破ったことを怒っているのなら、私も御当主に対して、お返事しなきゃ)
「戻る前にひとつだけお願いがあります。ローゼル様とお話しさせて下さい」
「…ローゼルと?」
「ええ。すぐ済みます」
サクナが表情を変えないまま、けれどほんの少しだけ頷いたのを見て、姫はサクナに頭を下げてから、ローゼルの方に向き直りました。
「え?いえ、そんな?…えっと、別に、全然…大丈夫、です…?」
スグリ姫はぐるぐるがぐるぐるしすぎて周りでどんな会話が交わされていたのか全く分かっていなかったのですが、タンム卿が険しい表情を浮かべて姫に謝罪し、ローゼルが顔を赤くしてそっぽを向き、ビスカスが二人を交互に眺めて俯いて溜息を吐くのを見て、何があったか聞ける雰囲気ではないと悟って、無理矢理色々誤魔化しました。
「えーっと、でも…あのう…」
せめて二人が兄妹なのかどうか位はちゃんと確かめておこうと姫が口を開いた瞬間。
「何だ、これは」
地を這うような威圧感の有る声が、廊下に響きました。
「あ」
「来るなと言っただろう」
(すごく怒ってる)
声の主は、この家の主でした。
彼をこんなに怒らせたのは、99人目のお相手だったタンム卿とのお見合いが流れた直後に、サクナの泊まっていた客室に押し掛けた時以来でした。
けれどその時でさえ、こんなに取り付く島も無いような冷たい態度では有りませんでした。
「…ごめんなさい」
「スグリ嬢を責めるな。引き留めたのはロゼと私だ」
「家の問題だ。口を挟むな」
姫が謝っても何も言わないサクナを見かねたのか、タンム卿が取りなしましたが、一蹴されました。
「部屋に戻れ」
「はい。…でも」
「何だ」
サクナに睨まれて、姫は一瞬背中がぞくっとしました。
(今、『家の問題』って、言ってた)
姫は、睨みつけてくるサクナから目を逸らさずに見返しました。
(ご当主として私に命じた事を私が破ったことを怒っているのなら、私も御当主に対して、お返事しなきゃ)
「戻る前にひとつだけお願いがあります。ローゼル様とお話しさせて下さい」
「…ローゼルと?」
「ええ。すぐ済みます」
サクナが表情を変えないまま、けれどほんの少しだけ頷いたのを見て、姫はサクナに頭を下げてから、ローゼルの方に向き直りました。