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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
「ローゼル様」
「何よ」
「ローゼル様。私にこちらの色々なことを教えてくださって、それから、私が何も知らないということを教えてくださって、ありがとうございました」
「……」
「私は、何も知らないというのがどういう意味なのか、全然分かっていませんでした。それについて今日教わって…昨日も、ローゼル様に色んなことを教わったのに、その…サクナとのこと勘違いして勝手に拗ねちゃって、自分がすごく失礼だったなって思って、改めて、御礼を言いたくて」
「…貴女、」
最初はしっかり話し始めたのに、勘違いの件になってだんだん物言いがぐだぐだになって来た姫に、ローゼルはいらいらと言いました。

「貴女って、馬鹿なの?!サクナ様のことは、貴女が勘違いするように、わざと言ったのよ!」
「うわ、言っちゃったよ」
「ロゼ!?」
「ローゼル!てめぇ!」
ローゼルの言葉を聞いて、ビスカスは顔を覆い、 タンム卿は眉を顰めて首を振り、 サクナはローゼルに詰め寄りそうになりました。
ところが、姫は。

「え?あれ、わざと、だったんですかっ!?」
「…え?」
ローゼルにわざと勘違いさせられたと聞いた姫の声がなぜか弾んでいるので、姫以外の全員が毒気を抜かれました。

「私、自分がうっかりだから、勝手にものすごくすごい恥ずかしい勘違いしたのかと思ってました!!そうじゃなかったってことですよね!?」
「ええ、まあ…」
「良かったー!」
姫はローゼルに向かって嬉しそうにそう言うと、サクナの方に向き直りました。

「それって、私ちゃんと言われた通りに聞いてたって事よね?」
「ああ、まあ…」
「良かったあ!史上最大のうっかりじゃなかったーー!!」
姫の喜びっぷりを見て、ビスカスはこっそり吹き出し、サクナはどういう顔をしていいか分からない様な変な顔になり、ローゼルは溜息交じりに言いました。

「貴女…ほんっっとに、馬鹿なのね…」
「お嬢様!」
「…馬鹿だけど…ここまで来ると、貴重な馬鹿ね…」
「お嬢様、馬鹿馬鹿言い過ぎで」
「五月蝿いわね。…スグリ様」
「はい?」

「昨日は意地悪言ったわ。ごめんなさい」
「ええええええ!!」
「…さっきから五月蝿い、ビスカス」

「…や…お嬢様が…有り得ねぇ…」
「ロゼ」
放心状態のビスカスと、驚きながらもほっとした様子のタンム卿につんとした目を向けながら、ローゼルは姫に言い放ちました。
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