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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第5章 桃と来客
「待たせたな」
「いや。お先に頂いているよ」
サクナが執務室に到着した時には、タンム卿とローゼル、ビスカスの前には、既に桃の皿がありました。
「今日急に来た用件は何だ」
「春以降の予定が決まったなら、早めに固めておきたい」
例年ですと翌年の予定は収穫後には大体決まっているはずでしたが、今年は姫との今後の予定がはっきりするまでは、という事で、春以降の予定についてはそちらが決まり次第決定するということになっておりました。
「…というのは口実で、スグリ嬢に早くお会いしたくてね」
「お前」
タンム卿の軽口を聞いたサクナは不機嫌顔で目を怒らせましたが、それ以上のことは言いませんでした。
「もちろん、予定を早く決めろと他の長老家の方々から責っ付かれてもいるよ?それに、見合いした相手がその後幸せかどうかくらいは、気にしても良いだろう?」
「……」
サクナが嫌そうな顔をすると、タンム卿は楽しげに畳み掛けました。
「分かってるだろうが、いつまでも長老達から奥方を隠しては置けないぞ?第一、大人しく隠れていそうなタイプでもないだろうし…なあ、ロゼ」
「…ええ。『うっかり』あちらこちらに首を突っ込みそうな奥方様ですわよね」
話を振られたローゼルは、フォークを置いて口を拭うと兄の意見に同意しました。
「人を巻き込むのがお上手そうですし…何しろ、『うっかり』なんて事とは無縁だったサクナ様に、『うっかり』の種を植え付けたくらいですもの」
「そうですねー、お嬢様に謝らせなすったくらいですからねー……うわっ」
ビスカスは「うっかり」感想を口にしてローゼルに冷たく一瞥され、小声で「怖っ」と言いました。