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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第1章 ヒイラギと姫君
「はじめまして。サクナの婚約者の、スグリです。ご親切に、どうもありがとうございます」
サクナとビスカスが立ち去ると、姫は美女にぺこりと頭を下げました。
「お仕事中なのに、お世話をおかけしてすみません。ローゼル様…で、よろしいですか?」
「ええ。初めまして、スグリ様。ローゼルと申します」
にっこり笑って優雅にお辞儀をした背の高い女性は、よくよく見ると美しいだけでなくスタイルも良く、南の人らしい健康そうな色の肌と、派手な印象の顔立ちをしていました。
(…うっわあ…見れば見るほど、すっごい迫力のある、すっごい美人のお姉さんだぁ…)
姫がぽかーんと眺めていると、美女が微笑みながら言いました。
「どちらか、ご覧になりたいところはお有りですか?」
「あ、すみません。えーっと…何があるのか、ぜんっぜん分からないので…お任せしても良いですか?」
「…畏まりました。では、サクナ様もおっしゃった通り、建物の中には入らずに、一通りどんなものがどこにあるのか説明しますね」
こちらにどうぞ、と示されて、スグリ姫はローゼルの後に付いて行きました。
「ここが、今居る所です」
ローゼルは、まず、姫にも分かりやすいように、落ちていた枯れ枝を拾って、地面に略図を書いてくれました。
「こちらが、今入って来られた入口。そちらは主にお客様が通られる正式な表門です。門を入ると、人しか通れません。いつもは施錠されています」
そのあと、表門から直角に少し離れた所に入り口らしき切れ目を入れて、そこに二重線を引きました。
「…ここは、お屋敷や、ここにある建物に入るための通用口です。こちらからは、荷車や馬車が入れます。夜は施錠されます。昼はいつも開いていますが、常に門衛が居ます」
「すごい…厳重なのね…」
ローゼルが姫をちらっと見て、くすりと笑いました。
「そりゃあ、厳重ですわよ。国中でここにしかない果樹も有るんですもの」
「…へー…」
「こちらがお屋敷。スグリ様はだいたいここにいらっしゃることになりますのね。こちらが苗の畑。こちらが栽培を研究している建物で、こちらが…」
姫は延々と続く説明を聞いていて、慣れるまでは本格的に迷子の心配がありそうね、と思いました。
建物の後ろに建物、畑の後ろに畑、果樹園の向こうに別の果樹園…と、ローゼルの説明を聞いていると、果てしなく敷地が続いているように思えてきます。
サクナとビスカスが立ち去ると、姫は美女にぺこりと頭を下げました。
「お仕事中なのに、お世話をおかけしてすみません。ローゼル様…で、よろしいですか?」
「ええ。初めまして、スグリ様。ローゼルと申します」
にっこり笑って優雅にお辞儀をした背の高い女性は、よくよく見ると美しいだけでなくスタイルも良く、南の人らしい健康そうな色の肌と、派手な印象の顔立ちをしていました。
(…うっわあ…見れば見るほど、すっごい迫力のある、すっごい美人のお姉さんだぁ…)
姫がぽかーんと眺めていると、美女が微笑みながら言いました。
「どちらか、ご覧になりたいところはお有りですか?」
「あ、すみません。えーっと…何があるのか、ぜんっぜん分からないので…お任せしても良いですか?」
「…畏まりました。では、サクナ様もおっしゃった通り、建物の中には入らずに、一通りどんなものがどこにあるのか説明しますね」
こちらにどうぞ、と示されて、スグリ姫はローゼルの後に付いて行きました。
「ここが、今居る所です」
ローゼルは、まず、姫にも分かりやすいように、落ちていた枯れ枝を拾って、地面に略図を書いてくれました。
「こちらが、今入って来られた入口。そちらは主にお客様が通られる正式な表門です。門を入ると、人しか通れません。いつもは施錠されています」
そのあと、表門から直角に少し離れた所に入り口らしき切れ目を入れて、そこに二重線を引きました。
「…ここは、お屋敷や、ここにある建物に入るための通用口です。こちらからは、荷車や馬車が入れます。夜は施錠されます。昼はいつも開いていますが、常に門衛が居ます」
「すごい…厳重なのね…」
ローゼルが姫をちらっと見て、くすりと笑いました。
「そりゃあ、厳重ですわよ。国中でここにしかない果樹も有るんですもの」
「…へー…」
「こちらがお屋敷。スグリ様はだいたいここにいらっしゃることになりますのね。こちらが苗の畑。こちらが栽培を研究している建物で、こちらが…」
姫は延々と続く説明を聞いていて、慣れるまでは本格的に迷子の心配がありそうね、と思いました。
建物の後ろに建物、畑の後ろに畑、果樹園の向こうに別の果樹園…と、ローゼルの説明を聞いていると、果てしなく敷地が続いているように思えてきます。