この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第6章 敬語と命令
「…違ぇ…」
「え??」
「別に、変とは思ってねぇよ…」
変と思うどころか、逆でした。
「感じた」という予想外の答えはともかく、怖がらせたのではないかという自分の想像が杞憂だったことがはっきりしたので、サクナは内心安堵していました。
「変とは思わねぇが…お前は本当に、何言い出すか分かんねぇのな…」
「へ?」
「俺のああいう態度を見ると、普通は皆怯えんだよ」
出会った最初からそうだった、とサクナは思いました。
姫は時々、サクナの思いも寄らないような、突拍子も無い事を言い出すのです。
それが決して嫌ではなく、それどころかその思いがけなさを愛おしく思っている自分が可笑しくて、サクナは寝台から起きあがると、姫を緩く抱き締めました。
「怯えたりしないわよ!だって、冷たい時は冷たい必要があるから、冷たいんでしょ?当主様には当主様のお仕事があるんだもの。厳しくしなきゃいけない場面だってあるだろうし、お願いじゃなく命令しなきゃいけない事だって、有ると思うわ」
「スグリ…」
サクナは、この件に関しての姫の理解が、自分の想像よりも深かったことに驚きました。
考えてみれば姫はうっかりとはいえ王族なのですから、人の上に立つという事が分からない訳はなかったのです。
自分の勝手な想像は姫を見くびっていたからだと気付き、サクナは心の中で反省…しかけたのですが、そのとき姫の呟きが聞こえました。
「それに、ああいうサクナも私は好きよ。ピシッとしてるの、かっこよかったもの…」
はにかみを含んだ姫の一言で、サクナの殊勝な反省の心は吹っ飛びました。
「おい…これで、俺はお前を永久に怒れなくなったぞ…」
「へ??」
「怒って感じるとか格好いいとか言われちゃ、怒る意味ねぇだろうが」
そう言うと、サクナは姫の髪に口づけました。
「へ?…そう?…そうなるの?…でも、それは、ちょっと困るわ…」
「なんでだよ」
髪を梳くように撫でながら聞くと、姫は真剣な声で言いました。
「え??」
「別に、変とは思ってねぇよ…」
変と思うどころか、逆でした。
「感じた」という予想外の答えはともかく、怖がらせたのではないかという自分の想像が杞憂だったことがはっきりしたので、サクナは内心安堵していました。
「変とは思わねぇが…お前は本当に、何言い出すか分かんねぇのな…」
「へ?」
「俺のああいう態度を見ると、普通は皆怯えんだよ」
出会った最初からそうだった、とサクナは思いました。
姫は時々、サクナの思いも寄らないような、突拍子も無い事を言い出すのです。
それが決して嫌ではなく、それどころかその思いがけなさを愛おしく思っている自分が可笑しくて、サクナは寝台から起きあがると、姫を緩く抱き締めました。
「怯えたりしないわよ!だって、冷たい時は冷たい必要があるから、冷たいんでしょ?当主様には当主様のお仕事があるんだもの。厳しくしなきゃいけない場面だってあるだろうし、お願いじゃなく命令しなきゃいけない事だって、有ると思うわ」
「スグリ…」
サクナは、この件に関しての姫の理解が、自分の想像よりも深かったことに驚きました。
考えてみれば姫はうっかりとはいえ王族なのですから、人の上に立つという事が分からない訳はなかったのです。
自分の勝手な想像は姫を見くびっていたからだと気付き、サクナは心の中で反省…しかけたのですが、そのとき姫の呟きが聞こえました。
「それに、ああいうサクナも私は好きよ。ピシッとしてるの、かっこよかったもの…」
はにかみを含んだ姫の一言で、サクナの殊勝な反省の心は吹っ飛びました。
「おい…これで、俺はお前を永久に怒れなくなったぞ…」
「へ??」
「怒って感じるとか格好いいとか言われちゃ、怒る意味ねぇだろうが」
そう言うと、サクナは姫の髪に口づけました。
「へ?…そう?…そうなるの?…でも、それは、ちょっと困るわ…」
「なんでだよ」
髪を梳くように撫でながら聞くと、姫は真剣な声で言いました。