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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第6章 敬語と命令
「スグリ?」
「はいっ…っ!?」
名前を呼ばれた姫が見上げると、ひやりとするような目で見下ろされました。
それから薄く笑って頬を撫でられ、姫の背中はぞくぞくしました。

「お前を抱かせろ」
「……はい、旦那様…」

こうして、姫がちゃんと怒られることが出来る様にするための、敬語と命令の練習が始まりました。



「スグリ」
「んっ…はい」
命令と敬語の練習をする、と言って始めたことの割には、人声の静かな時間が続いていました。
もっとも、人の声以外の衣擦れの音や湿った何かが触れ合う音、肌を吸い上げる音や荒い息遣いの音などは、引っ切り無しに聞こえては居りました。

「何も言わねぇと練習にならねぇだろ、何か言え」
「はい…っ……きもちいっ…です」
「もっと無ぇのか」
「んっ…そこ、いっぱいさわってくださ…っ…」
「…代わり映えしねぇな」
「…ごめんなさ…きもちよすぎて、おもいつかな…です…」
はあはあ息をしながら眉を顰めて一生懸命考えた姫は、へろへろした口調で言いました。

「えっと…きもちいいこと、いっぱいしてください?」
「…痕付けさせろ 」
「っふぁい…いっぱいつけて、ほし…です」
姫の白く柔らかな内腿に舌と唇を這わせながら、サクナはそろそろ潮時か、と思いました。
姫には旅の直後だったのに昨日も無理をさせたので、今日は控えめにしなくてはと、思っていたのです。

「きゃんっ!!」
そんなことを考えていたサクナは、痕を付け終えると何気なく姫を抱き締め、姫の首筋をぺろりと舐めました。
姫はその刺激でサクナにしがみつきましたが、その時、二人ともうっかり忘れていたことを思い出しました。

「つっ!」
「…あ!」
サクナにぎゅっと抱き付いた姫が、ミミズ腫れの傷に触ってしまったのです。
姫がサクナにミミズ腫れを作ったのは、つい昨日のことでした。二人とも忘れていましたが、触られるとまだ痛んだのです。

「ごめんなさい!いたい…ですか?」
「いや、大丈夫だ。驚かせて悪かった。気にすんな」
「…いたい、ですよね?」
「触んなきゃ平気だ。どってこと無ぇよ」
「う…ごめんなさい…」
「もう良い。続きヤるぞ」
サクナが姫の胸元に唇を寄せようとすると、姫がサクナを押し止めました。
「…ちょっと、まって…くださ」
「なんだ?」
姫はううう、と唸ると身を捩って、くるんとうつ伏せになりました。
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