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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第7章 暇とお仕事
「今から私が三人の候補の方々の説明をします。それを聞いて、この人は雇ってもいいなーって人を、一人決めてください」
「分かった!頑張る!」
大事な練習だわね!と張り切る姫を横目で見て、バンシルは付け加えました。

「そうそう。言っときますが、ちゃんと考えて、合格させるか、不合格にするか、決めてくださいね」
「ええええっ!?」
噛んで含めるようなバンシルの言葉を聞いて、スグリ姫は事の重大さにやっと気付いた様でした。

「た…大役ねっ…今からするのは練習だけど、本番でも、せっかく応募したのに不合格になる人も出るってこと…よね…?」
「仕方ありません、全員雇うわけには行きませんから。そういうものです」
「そ、そうよね…そういうものよね…」
うろたえる姫を尻目に、バンシルは少し考えてから、架空の候補者の身の上を読み上げました。

「では、一人目から。弟や妹が何人も居て、」
「合格でっ!」
「…次、二人目。お母さんが病気で、」
「ごうかくっ!」
「…最後、三人目です。食べるものにも困る毎日」
「ご、ごうかくっ?!」

「…姫様?」
「……はい……」
「選ぶの一人って言いましたよね。真面目にやってください」
「うう…真面目にやってるわよぉ…」
全員合格にしてしまって項垂れていた姫は、困った顔になりました。

「練習問題が難しいのよ、みんなお仕事無いと困りそうな人ばっかりじゃない…」
「でも、姫様、私が身の上を話してる途中で決めてますよね?」
「う…だって、聞いた瞬間に、様子が頭に浮かんじゃうんだもの…」
バンシルの言葉を聞いた姫の頭の中には、小さい弟や妹がご飯まだー?とまとわりついて来たり、病気のお母さんが横になりながら済まないねえと涙ぐんでいたり、台所や食料庫に食べ物の影すら見えず空っぽで途方にくれている様子が浮かんでしまい、なんとかしたくなってしまうのでありました。

「例えば三人目の人が、『食べるものにも困る毎日なんですけどー、仕事するのは嫌いなんですー。でもお金欲しいんで、仕事は適当ですけど雇ってくださーい』って人だったらどうすんですか」
「ううう…」
呻る姫の方から、成り行きを眺めて呆気にとられているサクナの方に向き直り、バンシルは言いました。
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