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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第7章 暇とお仕事
(部屋で出来ないこともないけど、外に行った方が良いわよね…)
厨房に行くことを止められた理由は「とにかく駄目」という事でしたが、外に出ることを止められた理由は「迷子になるから」でした。それならば迷子にならないようにして外に出るなら良いだろうと、姫は勝手に解釈しました。
「よーし、決めた!」
途中で誰かに会ったら外に出ると言っておこうと思いながら、姫は袋と部屋の鍵を持って、いそいそと部屋から出て行きました。
「あ、クロウさん!」
姫は屋敷を出る前に、運良くクロウに会いました。
面接は屋敷ではなく仕事用の建物で行われている筈なので、クロウがいるということは、今日の面接担当はサクナとバンシルなのでしょう。
「おや、どうなさいましたか?」
「迷子にならない辺りまで、お出かけしてくるわ…ほんのちょっとだけ」
「左様ですか。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
反対されるかもと思いながら言ったのですが、反対できる立場ではない為か、姫の外出に反対していない為か、クロウは姫の言葉にあっさり頷きました。
「ありがとう、行って来ます」
「…スグリ姫様」
「なあに?」
姫がやっぱり駄目って言われるのかしらと思っていると、クロウは意外な事を言いました。
「バンシル様と夕日を見に行かれた時ご覧になった、一番高い木を憶えていらっしゃいますか?」
「…あの、とんがった木?」
先日夕日を見に行った時、日の沈む方角にある森の中で、確かに一本だけ、背の高い針葉樹が目立っておりました。
「今時分は、夕日があの木より落ちた頃が、面接の終わる時刻です」
「え?」
「夕日があの木に差しかかった頃にお戻りになれば、余程遠くに行かれない限り、面接が終わらぬ内にこちらに帰り着かれますよ」
クロウの助言を聞いて、姫は考えました。
助言に従って帰って来れれば、誰かにーー特に心配性のサクナに、外に出たと気が付かれずに済むかもしれません。
サクナに内緒の作業をしようとしている事もあり、姫はそうする事にしました。
「良いことを教えてくださって、ありがとう!遅くなっても困るし、それまでには帰るようにするわ。行って来ます!」
姫は、扉を開けてお辞儀で見送るクロウに、笑顔でお礼を言いました。
そして、とんがった木の天辺に夕日が刺さったら帰ること、と口の中でぶつぶつ何度か繰り返しながら、屋敷の玄関から外に出たのでした。
厨房に行くことを止められた理由は「とにかく駄目」という事でしたが、外に出ることを止められた理由は「迷子になるから」でした。それならば迷子にならないようにして外に出るなら良いだろうと、姫は勝手に解釈しました。
「よーし、決めた!」
途中で誰かに会ったら外に出ると言っておこうと思いながら、姫は袋と部屋の鍵を持って、いそいそと部屋から出て行きました。
「あ、クロウさん!」
姫は屋敷を出る前に、運良くクロウに会いました。
面接は屋敷ではなく仕事用の建物で行われている筈なので、クロウがいるということは、今日の面接担当はサクナとバンシルなのでしょう。
「おや、どうなさいましたか?」
「迷子にならない辺りまで、お出かけしてくるわ…ほんのちょっとだけ」
「左様ですか。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
反対されるかもと思いながら言ったのですが、反対できる立場ではない為か、姫の外出に反対していない為か、クロウは姫の言葉にあっさり頷きました。
「ありがとう、行って来ます」
「…スグリ姫様」
「なあに?」
姫がやっぱり駄目って言われるのかしらと思っていると、クロウは意外な事を言いました。
「バンシル様と夕日を見に行かれた時ご覧になった、一番高い木を憶えていらっしゃいますか?」
「…あの、とんがった木?」
先日夕日を見に行った時、日の沈む方角にある森の中で、確かに一本だけ、背の高い針葉樹が目立っておりました。
「今時分は、夕日があの木より落ちた頃が、面接の終わる時刻です」
「え?」
「夕日があの木に差しかかった頃にお戻りになれば、余程遠くに行かれない限り、面接が終わらぬ内にこちらに帰り着かれますよ」
クロウの助言を聞いて、姫は考えました。
助言に従って帰って来れれば、誰かにーー特に心配性のサクナに、外に出たと気が付かれずに済むかもしれません。
サクナに内緒の作業をしようとしている事もあり、姫はそうする事にしました。
「良いことを教えてくださって、ありがとう!遅くなっても困るし、それまでには帰るようにするわ。行って来ます!」
姫は、扉を開けてお辞儀で見送るクロウに、笑顔でお礼を言いました。
そして、とんがった木の天辺に夕日が刺さったら帰ること、と口の中でぶつぶつ何度か繰り返しながら、屋敷の玄関から外に出たのでした。