この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第7章 暇とお仕事
「なかなか使い易そうな物を持ってるなあ、嬢ちゃん」
嬢ちゃん、と耳慣れない呼び方をされたスグリ姫は、一瞬びっくりしました。
ですが、前に城の厨房の面々から婚約祝い兼賭けに勝ったお礼として貰った道具入れを褒められたことに気が付いて、嬉しさでにっこりしました。
「あ、やっぱり、そう思いますか!?こういうのが得意な人が、私用に作ってくれて…刃物とか必要なもの一式が入るんで、すごく便利なんです!」
姫は道具入れを腰に巻いて道具を収めて見せながら、男性に答えました。
「そりゃあ大したもんだな!嬢ちゃんは、新しい使用人かい?」
姫はどう答えるか、少し迷いました。
当主の奥方が外で木工をしているのが、この地の常識的に大丈夫なのかどうか、よく分からなかったからです。
姫は何を言われても全く気にしませんが、サクナに迷惑は掛けたくありません。
迷った末、姫はとりあえず、男性の言葉に乗っておくことにしました。
「…まあ、そんなところ、です…」
「そうだろうと思ったよ。若旦那様が女の使用人を雇うって話だったからな」
「わかだんなさま?」
嬢ちゃんに続いての耳慣れない呼び方に、姫は作業準備の手が止まりました。
「あー、若旦那様ってのは、サクナ様の事だよ。もう若旦那様じゃ無えんだがな。俺ぁ前の旦那様の頃から働いてるから、旦那様って言うとどうしても先代様が浮かんじまって、落ち着かねぇんだ。もう癖だな」
「へえ…!先代様の頃から!?」
「ああ。嬢ちゃんは勿論会ったこと無えだろ?旦那様が亡くなった頃まだ小さかった年頃だよな?」
「そう…ですね?」
先代が亡くなったのがどのくらい前なのかは、地元の人ならばみんな知っている事なのでしょう。
姫はまだその辺をはっきりとは聞かされていなかったので、曖昧にお茶を濁しました。
「お。すまねぇ、すっかり邪魔しちまったな。仕事してくれ」
「いいえ。全然大丈夫です」
姫の答えに身が入っていなかったのがもう仕事に入りたいからだと思われたのか、男性は立ち去ろうと片付け始めました。
姫は逆に、もっと「旦那様」と、それ以上に「若旦那様」の話を聞きたいと思っていました。
けれど、新しく雇われた使用人だと思われている以上、あまり根掘り葉掘り聞くのも怪しまれそうなので、引き止めるのは諦めました。
嬢ちゃん、と耳慣れない呼び方をされたスグリ姫は、一瞬びっくりしました。
ですが、前に城の厨房の面々から婚約祝い兼賭けに勝ったお礼として貰った道具入れを褒められたことに気が付いて、嬉しさでにっこりしました。
「あ、やっぱり、そう思いますか!?こういうのが得意な人が、私用に作ってくれて…刃物とか必要なもの一式が入るんで、すごく便利なんです!」
姫は道具入れを腰に巻いて道具を収めて見せながら、男性に答えました。
「そりゃあ大したもんだな!嬢ちゃんは、新しい使用人かい?」
姫はどう答えるか、少し迷いました。
当主の奥方が外で木工をしているのが、この地の常識的に大丈夫なのかどうか、よく分からなかったからです。
姫は何を言われても全く気にしませんが、サクナに迷惑は掛けたくありません。
迷った末、姫はとりあえず、男性の言葉に乗っておくことにしました。
「…まあ、そんなところ、です…」
「そうだろうと思ったよ。若旦那様が女の使用人を雇うって話だったからな」
「わかだんなさま?」
嬢ちゃんに続いての耳慣れない呼び方に、姫は作業準備の手が止まりました。
「あー、若旦那様ってのは、サクナ様の事だよ。もう若旦那様じゃ無えんだがな。俺ぁ前の旦那様の頃から働いてるから、旦那様って言うとどうしても先代様が浮かんじまって、落ち着かねぇんだ。もう癖だな」
「へえ…!先代様の頃から!?」
「ああ。嬢ちゃんは勿論会ったこと無えだろ?旦那様が亡くなった頃まだ小さかった年頃だよな?」
「そう…ですね?」
先代が亡くなったのがどのくらい前なのかは、地元の人ならばみんな知っている事なのでしょう。
姫はまだその辺をはっきりとは聞かされていなかったので、曖昧にお茶を濁しました。
「お。すまねぇ、すっかり邪魔しちまったな。仕事してくれ」
「いいえ。全然大丈夫です」
姫の答えに身が入っていなかったのがもう仕事に入りたいからだと思われたのか、男性は立ち去ろうと片付け始めました。
姫は逆に、もっと「旦那様」と、それ以上に「若旦那様」の話を聞きたいと思っていました。
けれど、新しく雇われた使用人だと思われている以上、あまり根掘り葉掘り聞くのも怪しまれそうなので、引き止めるのは諦めました。