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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第8章 木柵とリンゴ
「嬢ちゃん、こりゃ立派なもんが出来たなあ!」
「ほんと?ありがとう!」
スグリ姫の作っていた木工品が、ほぼ仕上がりました。
姫が外での作業を始めてから、今日で四日目です。バンシルが言ったように、今日で面接は終わりだと昼食の時に言われておりました。
今日に至るまで、姫が出掛けていることは、サクナは気付かぬままでした。
姫は毎日あずまやに通って、アダンに会ってお喋りし、やりかけの作業を進めていきました。打ち解けるにつれて、アダンは姫を「嬢ちゃん」と呼ぶようになり、姫の方ではアダンと話す口調が徐々に砕けて行きました。
姫がアダンに名乗ってからは、「嬢ちゃん」は時々「スグリ嬢ちゃん」になりました。
木工の作業は順調に進んだので、あとは部屋で仕上げをすれば良さそうです。
自分ではなかなか良い出来だと思っておりましたが、作業を見ていたアダンにもたいそう褒められたので、自惚れでは無く本当に上手く行ったようだと、姫は嬉しくなりました。
「こりゃあ誰かに頼まれたのかい?」
「ううん、頼まれ物じゃないわ…でも、自分のでもないけど」
「おや、じゃあ、贈り物かい?!」
「…うん、そんなとこ」
正確に言うと少し違うのですが、贈り物かと聞かれた姫は、はにかんで目を伏せました。
「そうかそうか。受け取る奴が羨ましいねぇ。きっと喜ばれるぞ、嬢ちゃんは腕の良い職人さんだな」
「ありがとう!そうだといいなー」
姫は道具を片付けながら、外して布袋に仕舞っていた指輪がちゃんとそこに入っているかを確かめました。
作業していて傷をつけたら大変だと思ったものの部屋に置いてくるのも躊躇われたので、毎回作業の前に外して袋に仕舞い、アダンと分かれた後に嵌め直しておりました。
「そうだ。アダンさん、私、明日からしばらく来れなくなるの。すごくお世話になって、すごく楽しく作業できたわ。本当に、どうもありがとう」
「そうか、そいつが完成したからなあ」
姫が少し寂しい気持ちで頭を下げると、アダンも残念そうに言いました。
「また何かあったら、いつでも来いよ」
「うん。また来れるようになったら遊びに来るわ」
「それじゃあ、嬢ちゃんに相談できるのも今日限りだな」
「相談?」
「ああ。嬢ちゃんがやってる仕事が一段落したら、ちぃっと知恵を貸して欲しいことが有ったんだが」
アダンはそう言うと腕を組み、ううむ、と唸りました。
「ほんと?ありがとう!」
スグリ姫の作っていた木工品が、ほぼ仕上がりました。
姫が外での作業を始めてから、今日で四日目です。バンシルが言ったように、今日で面接は終わりだと昼食の時に言われておりました。
今日に至るまで、姫が出掛けていることは、サクナは気付かぬままでした。
姫は毎日あずまやに通って、アダンに会ってお喋りし、やりかけの作業を進めていきました。打ち解けるにつれて、アダンは姫を「嬢ちゃん」と呼ぶようになり、姫の方ではアダンと話す口調が徐々に砕けて行きました。
姫がアダンに名乗ってからは、「嬢ちゃん」は時々「スグリ嬢ちゃん」になりました。
木工の作業は順調に進んだので、あとは部屋で仕上げをすれば良さそうです。
自分ではなかなか良い出来だと思っておりましたが、作業を見ていたアダンにもたいそう褒められたので、自惚れでは無く本当に上手く行ったようだと、姫は嬉しくなりました。
「こりゃあ誰かに頼まれたのかい?」
「ううん、頼まれ物じゃないわ…でも、自分のでもないけど」
「おや、じゃあ、贈り物かい?!」
「…うん、そんなとこ」
正確に言うと少し違うのですが、贈り物かと聞かれた姫は、はにかんで目を伏せました。
「そうかそうか。受け取る奴が羨ましいねぇ。きっと喜ばれるぞ、嬢ちゃんは腕の良い職人さんだな」
「ありがとう!そうだといいなー」
姫は道具を片付けながら、外して布袋に仕舞っていた指輪がちゃんとそこに入っているかを確かめました。
作業していて傷をつけたら大変だと思ったものの部屋に置いてくるのも躊躇われたので、毎回作業の前に外して袋に仕舞い、アダンと分かれた後に嵌め直しておりました。
「そうだ。アダンさん、私、明日からしばらく来れなくなるの。すごくお世話になって、すごく楽しく作業できたわ。本当に、どうもありがとう」
「そうか、そいつが完成したからなあ」
姫が少し寂しい気持ちで頭を下げると、アダンも残念そうに言いました。
「また何かあったら、いつでも来いよ」
「うん。また来れるようになったら遊びに来るわ」
「それじゃあ、嬢ちゃんに相談できるのも今日限りだな」
「相談?」
「ああ。嬢ちゃんがやってる仕事が一段落したら、ちぃっと知恵を貸して欲しいことが有ったんだが」
アダンはそう言うと腕を組み、ううむ、と唸りました。