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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第8章 木柵とリンゴ
「ここなんだがなあ」
「まあ…」
アダンに連れられて柵を見に来た姫は、壊れた柵を見て驚きました。

「外にある木の物って、こんなに傷むのねえ!」
「ああ。雨風に曝されるからな。一応、傷まねぇように防腐剤は塗ってんだが」
「これ、釘と膠でくっつけてあるの?」
「当たりだ。あと、防腐剤に使ってるタールも膠みてぇにも使えるな」
「へぇ…」
屋外に置く大きなものには小物と違う技術があると言うことに、姫は感心しました。
小物は、ひび割れたり虫が食うことはあっても腐ることは少ないので、見た目を綺麗にして汚れにくく丈夫にするために、せいぜい油で仕上げるくらいです。
姫は柵に近づいて検分しながら、柵の作りが小物よりも簡単なことに気がつきました。

「ねえ、端っこだけでも、これと同じようにしてみたらどうかしら」
姫は布袋をとんとんと叩いて、中身を示しました。
「木を組むのか?」
「ええ。そうするとくっつけるだけと違って、簡単に外れないでしょ?」
「なるほどなあ…だが、嬢ちゃんがやってたみてぇなのは、ちっと難しそうだな」
「あれは、作ってるのが見た目が大事なものだからよ。柵なら、もっと簡単な方法があるわ」
姫はそういうと周りを見回して、落ちていた枝を拾いました。
そして、先日ローゼルがしていたように枝で地面に絵を描きながら、バンシルの次兄に最初に教わった、単純な木組の方法を説明しました。

「なるほど、こうやりゃあ楽に丈夫になりそうだな」
「でしょ?柵は見た目は関係なくて、丈夫で危なくなければ良いわよね?これで十分だと思うわ」
姫はそう言ってから、柵でやったことないから多分だけど、と一言付け加えました。

「…そうだな。やってみなけりゃ分からねぇから、試しにやってみるか」
「ええ!まだ日も高いし、一緒にやってみましょ!…あ」
「どうした?」
「私、小物用の道具しか持ってなかったわ…」
「ああ、ウチのを使うか?ちっと待ってろ」
アダンは一度その場を離れると、ほれ、道具一式だ、と道具を持ってきてくれました。

「ありがとう!わ、ピッカピカね!」
「若旦那様が道具の扱いに厳しいんでな。使った後は放っぽらかさずに、次いつでも使える様にしとけってなあ」
「へぇ!」
(…また、良いこと聞いちゃった!)
サクナが不機嫌そうに道具の手入れを注意している姿が思い浮かんで、スグリ姫はくすっと笑いました。
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