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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第8章 木柵とリンゴ
「おいおい、どうした?!俺ぁなにか気に障ることを言っちまったかい?」
姫が口をきゅっと結んで涙目になったのを見て、アダンは狼狽えました。
「ううん!ごめんなさい、ちょっと、嬉しくって…褒めてくれて、ありがとう!でも、私、そんな風に言って貰える様な人じゃないわ」
「なんでだ?」
アダンは刃物の手入れに使う乾いた綺麗な布の新しいものを取り出して、姫の涙を拭いてやりました。
「刃物、自分で研げないの。お願いして研いで貰ってるんだもの、全然一人前じゃないわ」
「そんなこと無えぞ」
「え?」
姫が視線を上げてアダンを見ると、アダンは姫の頭にぽんと手を置いて言いました。
「刃物も全部木工職人が研いでたら、研ぎ屋は要らねぇだろ」
「…そう…?」
「そうさ。そりゃあちったぁ研げた方が良いが、何でも自分でやるこたぁ無え。いつも使える状態にしとけるように、目を配れりゃあ十分だ。誰が実際にやってるかってのは、大した問題じゃ無ぇよ」
「そうかしら…」
アダンは微笑みながら柔和な目で姫を見ていましたが、姫はまた俯いてしまったので、それに気が付きませんでした。
「…なあ、スグリ嬢ちゃん」
「なあに?」
「あんた、俺の孫んとこに、嫁に来ねぇか?」
「……へ?」
「ここに働きに来て間も無ぇのに嫁入りなんて、と思うかも知れねぇが、あんたはきっと良い嫁さんになる」
「まあ」
あんたはきっと良い嫁さんになる、という部分を聞いた姫は、まるで先代当主にそう言って貰えたような気がして、ふんわり頬を染めました。
「あんたみてぇのが嫁に来てくれりゃあ、俺もさぞかし長生きできるだろうよ。どうだ?すぐにとは言わねぇが、考えてみちゃあくれねぇか」
「…えっと、」
熱心に請われた姫は、アダンにどう答えようか、一瞬迷いました。
姫が口をきゅっと結んで涙目になったのを見て、アダンは狼狽えました。
「ううん!ごめんなさい、ちょっと、嬉しくって…褒めてくれて、ありがとう!でも、私、そんな風に言って貰える様な人じゃないわ」
「なんでだ?」
アダンは刃物の手入れに使う乾いた綺麗な布の新しいものを取り出して、姫の涙を拭いてやりました。
「刃物、自分で研げないの。お願いして研いで貰ってるんだもの、全然一人前じゃないわ」
「そんなこと無えぞ」
「え?」
姫が視線を上げてアダンを見ると、アダンは姫の頭にぽんと手を置いて言いました。
「刃物も全部木工職人が研いでたら、研ぎ屋は要らねぇだろ」
「…そう…?」
「そうさ。そりゃあちったぁ研げた方が良いが、何でも自分でやるこたぁ無え。いつも使える状態にしとけるように、目を配れりゃあ十分だ。誰が実際にやってるかってのは、大した問題じゃ無ぇよ」
「そうかしら…」
アダンは微笑みながら柔和な目で姫を見ていましたが、姫はまた俯いてしまったので、それに気が付きませんでした。
「…なあ、スグリ嬢ちゃん」
「なあに?」
「あんた、俺の孫んとこに、嫁に来ねぇか?」
「……へ?」
「ここに働きに来て間も無ぇのに嫁入りなんて、と思うかも知れねぇが、あんたはきっと良い嫁さんになる」
「まあ」
あんたはきっと良い嫁さんになる、という部分を聞いた姫は、まるで先代当主にそう言って貰えたような気がして、ふんわり頬を染めました。
「あんたみてぇのが嫁に来てくれりゃあ、俺もさぞかし長生きできるだろうよ。どうだ?すぐにとは言わねぇが、考えてみちゃあくれねぇか」
「…えっと、」
熱心に請われた姫は、アダンにどう答えようか、一瞬迷いました。