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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第8章 木柵とリンゴ
「お陰様で助かりました。あんまり気持ちの良い仕事っぷりなんで、てっきり新しく雇われた可愛い女職人さんだと思っちまいました」
顔をほころばせたアダンに褒められ、姫は嬉しくくすぐったい気持ちになりました。
が、そこに不機嫌に不機嫌が上乗せされたような、ムスッとした声が聞こえてきました。
「おい。スグリの力持ちと木工の腕に付いちゃあともかく、可愛いかどうかに付いちゃあお前の目は節穴だぞ」
「え?そうですかい?」
(え?そうなの?)
「ああ。お前が思ってる程可愛くねえ。そこまで可愛くねぇからな?残念ながらそりゃあお前の錯覚だ」
「はあ…そんなもんですかねぇ?」
(はあ?そんな風に言わなくってもっ)
可愛く無いと言われ過ぎ、姫は思わずムッとしました。
「…いずれにせよ、奥方様になさるにゃあ又と無ぇ、ぴったりの御方ですよ。良い嫁御様を娶られましたなぁ」
サクナがあまりにも姫の可愛さを否定するので、アダンは話の方向を変えました。しかし当のスグリ姫は、アダンに褒められたにも関わらず、静かにぷうっと膨れておりました。
「そうだな。可愛いってのはお前の気のせいだが、良い嫁ってなぁ全く以って異論は無ぇ。その通り、他にゃあ居ねぇ良い嫁だ」
今度はサクナが「良い嫁」を連呼したので、姫の膨れは少々収まりました。
アダンはそんな二人を微笑んで眺めていましたが、ふと屋敷の方を見やって、少しばかり目を潤ませました。
「若旦那様が、この上ない嫁御様をお迎えになる…旦那様も、さぞお喜びでしょうなあ…」
「…どうだかな。」
アダンに先代のことを言われた瞬間、サクナの不機嫌顔が緩みました。
その表情には微かに子どもの様な無防備さが滲んでいて、姫の胸はぽうっと暖かくなりました。サクナをぎゅうっと抱き締めて頭を撫でてあげたい様な、愛おし過ぎてもどかしい様な気持ちが湧きました。
「…俺ぁ決めましたよ。今日から旦那様は大旦那様に昇格だ」
「え?」
「大分遅ればせながら、今日からは俺の中でも、若旦那様が旦那様でさあ 」
「アダン…」
姫は言葉を失ったサクナの傍らにそっと近付いて、袖をきゅっと握りました。
「こんな良い奥方様を貰われるんだから、若旦那様はもう若旦那様じゃ無え。立派な旦那様だ」
アダンはそう言って鼻をすすって目を擦り、寄り添う二人の方を見ました。
そして、晴れ晴れとした表情で、破顔しました。
顔をほころばせたアダンに褒められ、姫は嬉しくくすぐったい気持ちになりました。
が、そこに不機嫌に不機嫌が上乗せされたような、ムスッとした声が聞こえてきました。
「おい。スグリの力持ちと木工の腕に付いちゃあともかく、可愛いかどうかに付いちゃあお前の目は節穴だぞ」
「え?そうですかい?」
(え?そうなの?)
「ああ。お前が思ってる程可愛くねえ。そこまで可愛くねぇからな?残念ながらそりゃあお前の錯覚だ」
「はあ…そんなもんですかねぇ?」
(はあ?そんな風に言わなくってもっ)
可愛く無いと言われ過ぎ、姫は思わずムッとしました。
「…いずれにせよ、奥方様になさるにゃあ又と無ぇ、ぴったりの御方ですよ。良い嫁御様を娶られましたなぁ」
サクナがあまりにも姫の可愛さを否定するので、アダンは話の方向を変えました。しかし当のスグリ姫は、アダンに褒められたにも関わらず、静かにぷうっと膨れておりました。
「そうだな。可愛いってのはお前の気のせいだが、良い嫁ってなぁ全く以って異論は無ぇ。その通り、他にゃあ居ねぇ良い嫁だ」
今度はサクナが「良い嫁」を連呼したので、姫の膨れは少々収まりました。
アダンはそんな二人を微笑んで眺めていましたが、ふと屋敷の方を見やって、少しばかり目を潤ませました。
「若旦那様が、この上ない嫁御様をお迎えになる…旦那様も、さぞお喜びでしょうなあ…」
「…どうだかな。」
アダンに先代のことを言われた瞬間、サクナの不機嫌顔が緩みました。
その表情には微かに子どもの様な無防備さが滲んでいて、姫の胸はぽうっと暖かくなりました。サクナをぎゅうっと抱き締めて頭を撫でてあげたい様な、愛おし過ぎてもどかしい様な気持ちが湧きました。
「…俺ぁ決めましたよ。今日から旦那様は大旦那様に昇格だ」
「え?」
「大分遅ればせながら、今日からは俺の中でも、若旦那様が旦那様でさあ 」
「アダン…」
姫は言葉を失ったサクナの傍らにそっと近付いて、袖をきゅっと握りました。
「こんな良い奥方様を貰われるんだから、若旦那様はもう若旦那様じゃ無え。立派な旦那様だ」
アダンはそう言って鼻をすすって目を擦り、寄り添う二人の方を見ました。
そして、晴れ晴れとした表情で、破顔しました。