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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第9章 埃と扉
「そうか。それはおいおい分かれば良いから、とにかくさっさと埃を落とせ」
サクナにそう言われた姫は、なんだかスースーするのに気付いて、自分の姿を見下ろしました。

「…ふぇっ?!はだかっ!!」
姫はしゃがんで丸くなりました。
「なんで今更隠してんだ。話してる間、ずっとお前を剥いてたぞ」
「うそっ!?ばかばか、知らないっ!ばかっ!!」
「気付かなかったのか?そりゃ、悪かった。詫びとして俺も脱ぐ」
「ひゃあっ!?それお詫びっ!?」
お詫びとしての根拠は全く有りませんが、サクナはさっさと服を脱ぎ捨てました。

「うわあぁっ?!ほんとに脱いだぁっ!?」
姫が丸まった上に顔まで伏せたのを見て、サクナは呆れました。
「なんで、今更…こんなの百回くらい見てんだろ」
「おふっ、お風呂で見てないっ!」
「場所関係有るのか?」
「あるわよっ!」
姫は丸まりながらもちらちらサクナを見てしまい、体中真っ赤になりました。仕事柄筋肉が程良く付いた引き締まった体は、風呂場でなくて寝室ならばこっそり見惚れたい所ですが、慣れない場所だと何故か恥ずかしく、姫は一人で身悶えました。
と、身悶えして丸まったままで、床から持ち上げられました。

「おー。丸まってると運びやすくていいな」
「ちょ!ま!」
「よし、落とすぞー」
「きゃ!」
落とすと言う言葉に似つかわしくなく、丸まった姫は、とぷんとお湯に浸けられました。

「う…うう…」
「埃落ちたか?」
「…ばかぁっ…まだ落ちてない…」
温かいお湯の中が気持ち良かったので、直前まできゃあきゃあ騒いでいた姫は、少し静かになりました。

「よし。掛けるぞー」
いつの間にか手桶を持っていたサクナは、姫の頭からお湯を掛けました。
「え、え…っぷ!」
「洗うぞー」
「やだ、洗わなくてい…っあ」
時々お湯を掛けられながら手で頭や体を洗われて、姫はますます静かになりました。

「…かなり楽しいな…」
「…んっ…たのしく、ない…」
「楽しくないか?ああ、そうか。一緒に入りてぇのか」
「いっ?!」
サクナが姫の返事を待たずにいきなり姫の背中側に入って来たので、浴槽からお湯が溢れました。
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