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柊屋敷の嫁御様(くすくす姫後日談・その5)
第10章 面接と候補者
「姫様。考えすぎるのやめてくださいな」
「うっ」
「『誰か一人だけ落ちたら可哀相だし、一人だけ残っても可哀相』とか、考えてますでしょ」
「うう…」
バンシルは髪の仕上げに入りながら、眉と眉をくっつきそうに顰めている、鏡の中の姫に言いました。

「言っときますけど、考えるだけ丸々無駄ですよ。今考えたからって、どうにかなることじゃないですよね?」
「ううう…」
それは全く、バンシルの言う通りでした。
今姫がどんなに考えても、誰がどうなるかなど、面接をしないことには分からないのです。

「ほら、出来ました。もう朝ご飯の時間ですから、行きますよ?この後の予定も詰まってますし、今朝はあんまりべったべった出来なかった誰かさんも、首を長ーくしてお待ちでしょうからね」
「…ん」

(そうね。結局はなるようになるだろうし、ならないようには、今どうしたって、ならないわ!)
姫は、考えるのを止めました。
そして朝食をとるために立ち上がって、バンシルと部屋を出たのでありました。



「わー!!わあー、わわわ!」
姫は初めて入った仕事場の応接室を見回して、驚きの声を上げました。
華美では有りませんが落ち着いた内装と調度の室内は、いかにも「仕事の為の場所」という印象でした。

「すごーい!お屋敷のお部屋とは、ずいぶん感じが違うのねえ…!」
朝食を終えた姫とサクナとバンシルは、今日の面接会場となるこの部屋に来ていました。
先日の面接も今日の面接も、屋敷ではなくこちらの部屋で行われることになっています。
屋敷の使用人候補であっても決定するまでは中に入れない、というこの方針に、姫は最初、ずいぶん厳しいのね、と驚きました。
しかし、敷地に入る時ですら常に門衛が居る様な家です。それを考えれば、厳しくて慎重なのは当たり前なのかもしれないと、姫は思い直ししました。

「スグリ、さっきから口が開きっ放しだぞ」
面接のときは閉じろよとからかわれて、姫は頬を膨らませました。
「意地悪ね!少しくらいびっくりしたっていいでしょ?二人はここに入ったことがあるけど、私は初めてなんだもの!」
姫はサクナの方を向いて、文句を言いました。
サクナは今日の面接には同席せずに、これから敷地内での仕事に行くことになっていました。今日は姫とバンシルだけというざっくばらんな状態で候補者の様子を見よう、という意図があるようでした。
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