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嫌がらせ
第1章 嫌がらせ
彼を店先で送ると、私は急いで席に戻った。
「ごめんなさい。いきなり連れてきちゃって……」
いいや、と父が首を振る。
そして、少しの沈黙の後、父がぼそりと言った。
「彼、小野田くんは……何となく、明に似てるな」
「……そう、かな? やっぱり……」
彼の持ち前の明るさは、兄の明に通じるところがある。彼と出会ってから、兄を思い出すことが増えた。それも、楽しかった記憶をだ。
「……お父さん」
「なんだ」
「……私、お父さんに謝りたいことがあるの」
事故後、お前のせいで二人は死んだんだ、と酷い言葉をぶつけたこと。それから気まずくなり、今の今まで父を意図的に遠ざけていたこと。
私は時々言葉につまりながらも、謝罪をした。
「……気にするな」
「でも」
「お前の中で心の整理がついたならそれでいい」
「私、思ってないから」
「お父さんのこと、駄目な父親なんて、一度も、思ったことないから……ね」
そうか────と静かに言った父の肩が、小刻みに揺れていた。
それが先程の震えとは全く異なるものであるということは、私でも分かった。