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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
「お嬢様ぁ、肌が弱ぇんだ。強引に扱ったら、すぐこうなりやす」
「それは……!」

 痣を見て驚いたなぁ、お嬢様にこんな事ぁ絶対しねぇお方達だけだった。
 ……あんた、なんで、驚かねぇんだ?
 知ってたろ。
 知ってたのに、なんで放って置けんだよ。

「新しい靴は靴擦れが出来るから三回は家ん中で履かねぇと外はお歩きになれねぇ、虫に刺されて引っ掻くと周り中腫れるから掻かずに湿布を当てなきゃいけねぇ、重い物を腕に提げて持ったりしたら腕の内側が痣んなる……お嬢様ぁ、そんなお人なんですよ」

 俺は、抱き付いて来たお嬢様の背中をゆっくり撫でた。
 お嬢様は、笑ってらした。今日も、あの倒れた日も。辛かったろうに。
 こんな苦しい目にお遭わせしちまったなぁ、俺の落ち度だ。俺ぁ、なんで気付かなかったんだよ。

「……あんた、ご存知じゃあ無ぇんですか?」

 答えろ。
 答えによっちゃあ、あんたを今すぐ俺がそこから引きずり降ろす。

「下らないな。知ってようが知らなかろうが、関係無いだろ?そんな事は、世話をする使用人が知って居れば良い事だ」
「下らねえ?関係ねぇって、何ですか?あんた、夫になるんですよね?奥様の事をきちんと見て、知って、大事に扱うってなぁ、下らねぇ事なんかじゃねぇでしょうが。夫より使用人の方が奥様を知ってるってなぁ何の冗談ですかい?お嬢様を、ちゃんと大事にしようとなさってんですか?」
「当然だろ。僕はロゼを愛している。子どもの頃から、ずっとだ」
「口ばっかなら、誰でも言えらぁね。愛してる女を自分の勝手で傷付けて、女の苦手な事にも聞く耳持たねぇってなぁ、どういう了見ですかい?」
「お前、本っ当に失礼だな……ロゼ、おいで」

 坊ちゃんに腰の辺りを雑に触られたお嬢様は、ほんの少しだけ、びくっとなさった。

「止めて下せえ」

 俺は坊ちゃんの手をお嬢様の御体から払い除けた。
 はっきり分かった。
 お前にゃ、お嬢様を任せられねえ。お前はお嬢様を傷付けた。
 ……お前は、敵だ。
 
「何するんだ!」
「何すんだは、こっちの台詞でさあ。お嬢様は腰のその辺に手を回されるなぁ、大っ嫌いなんだ。今までもそうなさった事が有るんなら、嫌そうになさってたのを見た筈だ」

 せっかくゆるっとなった肩の辺りがまたガチっと固くなって、息も詰めちまってる。
 嫌がってるって、分かんだろうが。
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