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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
 お嬢様は肌も弱ぇが、無遠慮に触られんのにも弱ぇんだよ。もぞもぞして居心地が悪いからって、腰や脇腹の辺りを触れられんのを殊の外嫌がられる。お嬢様にゃあ、腰に手ぇ回されんならここじゃねぇと駄目って場所が、ちゃんと有んだよ。

 お嬢様は、我が儘なんじゃ無え。繊細なんだ。
 我が儘も傲慢さも人を人とも思わねぇ所も、繊細さを守るための鎧だ。本人が脱ぎたく無ぇ鎧を、引き受けられもしねぇのに、何故脱がそうとするんだよ。ちゃんと見てりゃあ、分かるだろうが。
 俺は御従兄弟坊ちゃんを殴りてぇのを堪えて、睨み付けた。

「そんな事も知らねぇで、ご本人に何がお嫌で何がお好きか聞きもしねぇでーーそれより何より、お嬢様とあんなに一緒に過ごした癖にそんな簡単な事にも気が付かねぇで、どの面下げて『愛してる』なんて言ってんですか!?」

 俺は一旦言葉を切って、深呼吸した。怒っちゃいけねえ、落ち着かねぇと。こんなに泣いてるお嬢様を、これ以上脅かす訳にゃあいかねぇよ。

「……今更だって事ぁ、分かってます。でも、俺ぁあんたがお嬢様の夫になるなぁ、反対だ。お嬢様はこのままじゃあ、幸せになんてなれっこ無え」

 領主様と大奥様、タンム様の方を見る。領主様は呆然となさって、大奥様は眉を顰められ、タンム様と奥方様は、怒ってらっしゃる様だった。
 何方がどう思ってらっしゃろうが、知るか。俺ぁお嬢様にお仕えしてんだ。お嬢様のお幸せ以外は、全部些事だ。知ったこっちゃ無ぇよ。

「俺は、親族の端っくれとして、この婚約に異議を申し立てます。お嬢様ご自身以上にお嬢様の事を気遣えねぇ様なお方を、お嬢様のお相手と認める事ぁ、出来やせん」

 居並んだ皆様とお坊ちゃんに宣言すると、お嬢様がぎゅっと抱き付いて来なすった。痛くない様に、お嬢様を壊さない位の力で抱き締める。
 申し立てにゃあ、なんだかややこしい作法が有った気もするが、そんな事ぁどうでも良い。この申し立てが認められなくたって、俺ぁお嬢様をお前にゃあ遣らねえよ。首になろうがどうしようが、俺ぁお嬢様の護衛でさぁね。お嬢様はここから掻っ攫ってでも、御守りする。

「婚約の宣誓も異議申し立ても、とっくに終わってる。お前が認めようが認めまいが、ロゼは」
「リアン」

 お坊ちゃんが激昂して俺に詰め寄ろうとした時、広間に良く響く落ち着いた声が、お従兄弟坊ちゃんの名を呼んだ。
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