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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第15章 約束は、守るものです
「この土地の婚約で踊りを行う意味を、知っているかしら?」
「お義祖母様」
お坊ちゃんに話し掛けたなぁ、大奥様だった。
「この地で踊りが婚礼に関する儀式に入っているのは、意味が有るんですよ。踊って互いに触れ合う事で、最後の相性の確認をするのです」
大奥様は、お坊ちゃんとお嬢様、そして俺の方にもぐるっと視線を走らせなすった。
「あなた方は皆まだ若い。結婚は人生の終わりでは無いのよ。結ばれた先の長い人生が幸福な物で無くなるかもしれない要素があるのなら、考え直すのも、一つの選択なのですよ……ローゼル?」
お嬢様は名前を呼ばれて、顔を上げられた。泣いたからか、顔を擦り付けたからか、化粧もなんもかんも取れちまってらぁね。目は腫れてるし、鼻の頭ぁ赤い。でも、そんなんなってもやっぱり、お嬢様は誰よりお綺麗だ。お小せぇ頃みてぇで、すげぇ愛らしい。
……なんて、見惚れてる場合じゃなかった。
「貴女、今日はまだリアンと踊って居ないわね」
「嫌です」
お嬢様は、俺の服をぐっと握り締めた。
「ご免なさい、お祖母様。私、踊れません……痛いのも、怖いのも、もう、嫌っ……」
「ロゼ!」
お坊ちゃんの怒号を聞いて、俺はお嬢様を抱く手にほんの少し力を込めた。お嬢様が傍目にゃあ分からねぇ位に僅かに、俺に体を凭せ掛ける。
「リアン、ご免なさい。私の我が儘で振り回した事は、謝ります。でも、お見合いしてみて分かったの。貴方と一緒に居る間、私はずっと我慢をしていなくてはいけないって……貴方は、素晴らしい男性よ。家の為でもあると思って、頑張って慣れようとしたのだけれど、やっぱり、どうしても、慣れないの……」
お嬢様は、目を伏せて俺の肩におでこをつけて、ひとつ深呼吸しなすった。
「ビスカス?」
「へい」
「……私を、待っててくれる?」
「勿論でさぁ……大丈夫ですかい?」
「ええ」
お嬢様は俺から離れると御従兄弟様の方を向き、お辞儀した。
「本当に、申し訳ないのだけれど……婚約は、お断りさせて下さい」
「ロゼ。後継者交替の期限は、もうすぐだろう?それまでに結婚相手を決められなければ、この家には後継者が不在になるんだったよね?」
お坊ちゃんの言葉を聞いて、お嬢様は目眩でも起こされたみてぇにふらっとなさった。俺は急いでお嬢様をお支えすると、御従兄弟坊ちゃんを睨み付けた。