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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第16章 用法用量は大切です
「ただいま」
(ただいま帰りやしたー)
「ローゼル様!お帰りなさいませ!」
(……と、お帰りビっ……か旦那様)
小声の応酬をひっそり含んだ帰宅の挨拶が、リュリュと俺と、家令の間で交わされた。
「しばらく、部屋で休むわ。誰にも会いたくないの」
……え。誰にも。
誰にも会いたくねーってか?
誰にもって……俺にも?
「誰にも……とは」
俺と大体おんなじ疑問を家令が質問してくれて、リュリュはすっげぇえええ嫌そうな顔になった。
「誰にもは、誰にもよ。お父様も、お兄様も……お義母様もとにかく誰でも、絶対来ないでって伝えて。」
「……畏まりました」
リュリュはきゅっと踵を返して、部屋の方に向かおうとして……止まった。
「何してるの」
「はいっ?!」
「……」
「へ……っ」
目だけで、「行くわよ」と、言われた。
驚いて家令と目が合うと、ご愁傷様、という顔をされた。
友人宅での静養から久々にご自宅にお戻りになり、誰にも会いたくないから近付けるなと言いながら、俺を目だけでお連れになるローゼル様。
……哀れな生贄とでも、思われたんだろうね。
一応、現在は、生贄じゃなくて夫(仮)なんですけど……。
リュリュに続いて、うなだれて部屋までやって来た。
気分は市場に売られる仔牛だ。
このあと、どうなんだろねー、俺……。
ま、何が有っても、永遠にここから消えろと言われても、俺ぁずーっと、リュリュだけの、
「ねえ」
「へいっ?!」
やべぇ、聞き逃すとこだった。
「入って」
「……へい。」
先に立って扉を開けてくれて、俺が部屋に入った後も扉の前に居たリュリュが、また同じ様に中扉を開けた。
仔牛、再び。言われるがままに中扉をくぐる。
「ビスカス」
「へい……」
名前を呼ばれて、リュリュを見た。
ぎゅっと眉根を寄せている。んな顔しててもすげぇ綺麗だなんて、考えてみりゃあ酷ぇお人だよ。
どんなリュリュでも、俺にゃああんたが、この世で一番なんですよ。
「ビスカス?」
「へい?」
二度も呼ばれた。用件は無え。
なんか言いにくい事を、言おうとなすってんだろ。分かりたくなくても、分かりやす。
そう思ってたら、リュリュはもう一度、口を開いた。