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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第16章 用法用量は大切です
「ビスカス。」
「へいっ。」
大丈夫ですよ。俺ぁ何言われたって、平気でさあ……。
何でも来ゃあがれ、と身構えたのに。
「…………ぎゅってして。」
「…………へ?」
言われた事が思いがけなさすぎて、しばらく口を開けたまま、ぴくりとも動けなかった。
そしたらリュリュが中扉の前からずかずか俺の方に歩いて来なすって、どかっと俺にぶち当たったと思うと、ぎゅーーーっと俺を抱き締めた。
「ビスカス?」
「……へ、」
「……約束……」
「……へっ?」
「……忘れちゃったの?」
リュリュはふうっと溜め息を吐いて、俺の肩の上にこてんと頭を乗っけた。
……約束?約束……あー!約束な、約束!!
「申し訳、有りやせんっ!!」
「え?」
力の限り、謝った。肩にリュリュの頭が乗っかって引っ付いてるから、土下座もお辞儀も出来ねーな。誠心誠意謝る姿勢を、見せ辛ぇったら無い。
「嘘ぁもう吐かねえって約束したのに、俺ぁリュリュに黙って、勝手に酒を……!!」
「……それじゃないっ……」
「へっ?」
リュリュの方を無理矢理見たら、耳が赤かった。
「その事は、怒ってないわ」
「え?……でも、さっき帰りの道中で、一っ言も口聞いちゃくれなかったじゃねーですかい」
「……そうじゃないっ……」
「へっ?」
リュリュは、今度はふーーっと長く息を吐いた。
「とにかく。その件は、怒ってないわ。だって、私のためにしてくれた事でしょう?ひとこと言って置いてくれたら良かったのにとは、思うけど」
「あー……そー……そう?ですね……?」
そんなんで、良いのか。
……ま、良いか。リュリュが良いって言ってくれたんだしな。終わり良ければ全て良しって奴か。
俺が納得してほっとしてたら、リュリュがもごもご話し始めた。
「……口を、きかなかったのは……言っちゃいそうだったからよ。……約束のこと」
「……約束?」
「……ほんとに、忘れちゃったの……?」
リュリュは俺の肩の上に預けてくれていた頭を、ゆっくり上げた。