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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第9章 夢は夢だから夢なのです
「や…あたまぁ、だいじょぶです……ほんとに、こんやくなんざ、してねーんです…」

「…どういう事だ…」
「…どういう事かしら…」

「そいつぁ……たぶん…おじょーさまの、おもいちがいで…」

「思い違いっ?!」
「思い違いだぁ?」

俺の説明を聞いたお二人は、二度も同じ様な台詞を吐いて来やがった。
仲睦まじいのも、大概にして下せえ。一人が言やあ、分かりやす。

「でも、あの…クロウさんが、ビスカスさんも同意してたって」
「…なもん…あんときゃ、しゃべったりなんか」
俺がそこで口籠もると、サクナ様は何故だかにやっと笑い、スグリ様はもじもじなさった。

「喋れなかったってか?気ぃ失う位だからな。だが、クロウぁ言葉で同意してたとは、言って無かったぞ?」
「へ?」
「えっと、ね…間違いだったら、ごめんなさいね?…そのう…お二人が……くっ、口づけっ、とかっ…」
「くっ…!!!!!!!」
スグリ様が妙に力んで発した単語を聞いた俺は、血の気が引いた。

「あと、…頬擦りっ、とかっ?…してたの、見たって」
「ああ。それも、驚くほどもんのすっげぇ熱烈な奴だったって言ってたぞ?他の奴らならともかく、ローゼルとお前だろ?んなもん、何も無けりゃあやらねぇだろって言われて、成る程、と…クロウぁ嘘は吐けねぇ奴だからな」
「……っ…そりゃ……」
スグリ様とサクナ様に、今さっきまで夢だと思っていた恥ずかしすぎる現実を突きつけられて、俺は思った。
お願いします。
手段は何でも構いやせんから、俺をもう一度、気絶させてくだせえ…!!!!!!

「…そりゃ……その…えーっと……それは…」
「それはっ!?」
「…それは、しやした……けど…」
「ええっ!したのっ!?したの…やっぱりっ?!」
スグリ様は真っ赤な顔でおっしゃったが、そのすぐ後で、はたと不思議そうな顔になった。

「…あら?でも、した『けど』?『けど』って、なあに?」
「くちづ…けとかぁしやしたけどこんやくなんざしてねぇですっ」
恥ずかしさの余りまた気絶しそうになりながら、早口で言い捨てた。

「ふうん…あれやこれやをしたのは本当だが、ローゼルの言ってる婚約ってのは、思い違いだって事か?」
「……へえ…おりゃあ、ぜんぶ、ゆめかと…おもって…」
あれ全部、本物のお嬢様と、本当にやっちまった事だったってか。
…嘘だろ…?!
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