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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第9章 夢は夢だから夢なのです
サクナ様やスグリ様みてぇな御方達にゃあどんなに説明したって分かっちゃ頂けねぇかもしれねー事を、このクッソお堅い家令が、あっさり分かると言ってくれやがったからだ。
「そうですねー。……お嬢様の仰る事をお聞きするってなぁ、当然なんですよ。俺なんざ、その為だけに居る様なもんですから」
「分かります」
クロウに頷かれた俺は、そのあとどう言ったら差し障りが無いか、少しだけ考えた。
「でも、じゃあお嬢様が『死んでおしまい、ビスカス』って言ったからってそうするかってぇと、そいつは少し違うんでさぁ」
つまり、お嬢様が「お前がご夫君になればいいじゃない」って言ったからってそうするかってぇと、それは違うんだって事でさぁね。
「ええ」
クロウの奴は、また頷いた。
「お嬢様に『死んでおしまい』って言われて従うよりも、もっとお嬢様の為になる俺の使い方が有るんなら、お嬢様の気紛れにゃあ、従ってちゃあいけねぇんです」
そう。
ガキの頃、よく悪ガキ達にからかわれた。
(そんなにお嬢様が大事なら、何でも言うこと聞くのかよ!死ねって言われたら、死ぬのかよ!?バッカじゃねぇのか?!)
馬鹿か。
馬鹿は、お前らだ。
「お分かりでしょうが、言われた事を言われた通りにやるだけの人間なんざ、お仕えする意味ぁ無ぇんですよ。お嬢様みてぇな御方であっても、ご自分の事ってなぁ、案外見えてらっしゃらねぇ時がありやすから……俺みてぇな立場の人間は、お嬢様の為になる事が何なのか、お嬢様ご自身よりもはしっこく目を配りながら、いっつも考えてなきゃならねーんですよ」
「……それは」
クロウが何か言いかけた時、扉を叩く音がした。
「……あ。」
「……ごきげんよう、ビスカスさん……」
クロウが招き入れた、クロウの言葉の途中でやって来た訪問者は、スグリ様だった。
お一人ではない。ご夫君と一緒でもない。サクナ様ぁとっくに仕事に出掛けた時間だ。
一緒に来たのは、お嬢様だった。