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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第9章 夢は夢だから夢なのです
「謝らなくても宜しいのは、私にも、ですわ」

 お嬢様はスグリ様ににこっと笑いかけ、両手でウサギの白い手を握った。

「本当に、色々、ありがとう。落ち着いたら、改めて御礼をさせて頂きたいわ」
「ローゼル様……」

 薔薇とウサギが手を取り合って微笑み合う、美しい光景。
 寝不足のせいか、お嬢様の目は赤い。面差しも心無しかやつれていらっしゃる。だが、やつれていても、お嬢様はお嬢様だ。どんなになっても、やっぱり極上の水晶のようにお美しい。
 眼福ってなぁ、この事だねー。さっきは声聴いてそう思ったが…耳福って言葉は有るのかwww

 生きてて、良かった。

 俺は目が覚めてから初めて、そう思った。

「……ビスカス?」

 お嬢様の変わらぬお美しさと、お二人の間に育まれつつある友情への湧き上がる感動に浸っていたら、不意に呼ばれた。
 やべ、ゾクゾクする。呼ばれて見られて幸福過ぎて、気が遠くなりそうだ。
 イッちまいそうな俺を、冷気を纏った固い声が引き止めた。

「お前、私に、何か言う事は無いの?」
「申し訳ございやせんっ!!」

 しまった。ウサギ姫同様、とりあえず反射的に謝っちまったwww

「……申し訳無い?どういう意味?」

 俺の反射的な謝罪にお嬢様は訝しみ、スグリ様は慌てなさった。

「あのっ、ローゼル様っ?!」
「何ですの?」
「お顔も見られたことですし、一旦ゆっくりお休みになって、お話はまた改めてされたらどうかしら?ビスカスさんは病み上がりですし、ローゼル様は寝不足ですし」

 スグリ様。さすが、下々の者にも心を砕くお姫様だぁね。
 さっき言ってた事をお嬢様に伝えちまったらどうなるのか、ご心配下すってるね?

「スグリ様」

 俺はスグリ様のご配慮だけを有り難く受け取って、後は潔く諦める事にした。

「俺にまで色々とお気遣い頂いて、有難うございやす。お嬢様とは、お話しさせて頂いた後で、ちゃんと休んで頂く様にしますんで……後は、お任せを」
「ビスカスさん……」

 ウサギは眉を寄せて俺を見て、右手を胸の辺りでグッと握り締めて、頷いた。さしずめ「頑張って!ローゼル様の事、宜しくね!!」とかなんとか、思ってるんだろーが。

『主に命じられても簡単に頷けない事と言うのは、有るもので御座います』

 俺はクロウの言葉を思い出しながら笑顔を作って、小さく頷いてみせた。
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