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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第10章 身から出た錆です
●月●日
「あれから、もう五日か」
「へえ」
サクナ様とスグリ様の婚約披露から五日、つまり俺が若奥様に刺されてから五日。その日の昼前、タンム様が様子を見に来て下さった。
「家の者がなかなか来られなくて、済まないな。今、少々取り込み事が持ち上がっている所なんだ」
「いえ」
なかなか来られないたって、誰も来なかった訳じゃあない。
事件当日から翌日の午後にかけてはお嬢様が居て下さったし、夕方にゃあ御領主様がサクナ様と一緒に見舞いがてら事件の時の様子を聞きにいらっしゃった。
若奥様には俺より先に話を聞けたものの、聞いてもはっきり答えられねぇ事が多かったらしい。やっぱり、誰かに何かをされた結果として、事を起こした様だった。
俺は、自分の見聞きした事をどこまで話すのが一番得策か、迷った。誰が何故こんな事を仕出かしたのか、分からねーからだ。誰が敵でもおかしくない状態で下手な事を言っちゃあ、お嬢様の身の安全に関わる。
ただ、事件を仕組んだ人間の元々の狙いはスグリ様じゃあ無かったらしい事は、話しておくことにした。まだ嫁いで来ても居ねぇウサギ姫と嫁馬鹿なサクナ様に、余計な心配をさせ続けるのは忍び無え。この一件で嫁が逃げたりしちゃあ、一生恨まれるしな。サクナ様は話を聞く前も聞いた後も不機嫌そうだったが、幾分かは安心されただろ。
その後、今日タンム様が見えるまでの間はどなたもいらっしゃっていないが、そりゃあ俺の自業自得だ。
お嬢様はここが仕事場なんだから、休んで無けりゃあ敷地の中には来ている筈だ。なのにここに顔を出されねぇのは、顔を出したくなくなる様な事を、俺が言っちまったからだろう。
お嬢様がお家にお帰りになるように仕向けたのは俺だし、ここに来たくなくなるように仕向けたのも俺だ。三日もお顔を見られねぇ日が続いてる事に、がっかりする理由なんか無ぇよ。
「その後、体調はどうだ」
「へえ。明日にゃあ帰っても良いだろうと、先程」
今朝、といってもついさっき、もうそろそろ動いても構わない、普通に過ごしても大丈夫そうだから帰っても良いと言われた所だ。
「明日か。ちょうど良かったな……いや、ちょうど悪かったのか」
「へ?」
「お前……ロゼとの婚約を、断ったそうだな」
部屋に入ってからあちこち視線を彷徨わせていたタンム様は、初めて俺の方を見た。