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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第10章 身から出た錆です

「……へえ……申し訳ありやせん……」

 婚約話自体はお嬢様の突拍子も無ぇ気紛れな我儘だとしても、御領主様もご子息様方も、了承して下さったと聞いている。それなのにお断りした事が申し訳なくて、俺は頭を下げた……のだが。


「ロゼに、理由を聞いたのか?それとも、聞かずに断ったのか?」

「え?」

 タンム様は俺に、思いも寄らぬことをお聞きになった。

「あいつ、お前にちゃんと話さなかったのか」
「ちゃんと、って……理由ってなぁ、どういう事ですか?」

 俺の質問に、タンム様は表情と口調を険しくされた。

「今回の一件で、ロゼは結婚しなければならなくなった。しかも、早急にだ。何故か分かるか?」
「……え」

「奥方が事件を起こした事で、兄貴は後継から外される事が決定した」

 俺はそこで息を止め、タンム様は溜め息を吐かれた。

「……親父様はのほほんとしている様に見えて、家業については非情な人だ。本人が起こした不祥事ではないが、妻がそういう状況にあった事を見過ごして事態を防げなかった人間に家を任せる事は出来ないと、はっきり言った。たとえサクナやスグリ嬢が許したとしても、兄貴を後継に据える事は、もう無いだろう。
 私は初めから継ぐ気は無いし、我が家は元々女系の家だ。女子が後継者候補になるのは、不思議な事では無い」
「……ええ……」

「サクナと事件の後始末の相談をしている時に、後継者の話も出た。ロゼを後継者に据えるにしても、独身のままでは何かと都合が悪い。後継になってから婿を取るとなると、どんな奴に付け込まれるか分からないからな。
 家の為に早急に結婚相手を探せと言われたロゼは、お前を婿にして跡を継ぐと言った。苦し紛れにお前の名を挙げたんだろうと、誰もが思った。
 だがロゼは、この話が出る前――お前が気絶する前に、結婚の約束をしたと言い出した。その上、傍で聞いていたクロウが、確かにそれらしき様子を見たと証言してみせた。
 お前も同意しているのなら、誰にも反対する理由は無い。後継を降ろされた兄貴でさえ、お前の婿入りに反対はしなかったんだぞ。お前以上に適した者は、私達の心当たりには居なかったという事だ」

 タンム様はそこで言葉を切ると、俺の事を睨み付けた。

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