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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第10章 身から出た錆です
「こんにちは」
タンム様が出て行かれた、しばらく後。俺の休んでいる部屋に、別の訪問者がいらっしゃった。
「スグリ様」
「明日、お帰りになるのよね?サクナと一緒に、お見送りする予定だけど……私からのお別れのご挨拶も、しておこうと思って」
「スグリ様のお別れ?」
「ええ。私は明後日、都に戻るの」
「明後日」
忘れてた。スグリ様は年越しの時期は、あちらにお戻りになる事になってたんだった。確か、披露目の会が終わったらって事だったんじゃ無かったか。
「私を庇って怪我なさったビスカスさんがお家に帰れる迄は待って欲しいって、都に戻るのを、伸ばして貰ってたの」
「そうだったんですか……」
「お陰様で、サクナと余分に過ごせちゃったわ!」
申し訳無ぇ事をしたと思っていたら、スグリ様が明るく言った。
へへっと笑うが、笑顔が固い。
お別れが、辛ぇんですね。俺でさえ、スグリ様が一時であれこの地から居なくなるのを淋しく思うんだから、お二人のお心の内は、いかばかりだろう。
「年明けに、またすぐお目にかかれると思うけど……お元気でね。ご無理なさらないで」
「はい。ありがとうごぜぇやす」
「それから……出来れば、なるべく早く、ローゼル様と仲直りなさってくれたら嬉しいわ。お二人とも、私の大切なお友達だから」
「……ええ」
スグリ様は、お嬢様の見合いの件は、ご存知無ぇんだな。
ご存知無ぇまま、ここから離れられた方が良い。余計な事は、言わねぇに限る。
俺はここにゃあ居ねぇサクナ様に配慮して、スグリ様の手を取って、甲すれすれで触れずに口づける振りをした。そしてスグリ様を見上げると、二人で顔を見合わせて、笑った。