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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第10章 身から出た錆です
「お帰りのご準備は、進んでらっしゃいますか?」
スグリ様が部屋から去られた後、何もしねーでぼーっと寝転がってたら、家令のクロウが来やがった。今日は千客万来だね。
「ぼちぼちです。荷物も別に有りませんし」
「左様で御座いますか」
クロウは部屋を見回した。荷物なんざ、お嬢様が持って来させたらしい着替えとタオルくれぇしか無え。刺された日に着ていた服は片付け済みなのか、起きた時から見当たらなかった。
「先日、仰って居た事ですが」
「先日?」
「貴方にとっても、同じなのでは有りますまいか?」
「え?」
「ローゼル様だけでは御座いません。自分の事は、誰にとっても、見え難い物で御座います」
家令が口にしたのは、目が覚めてお嬢様が来る前に、話が中断していた件だった。
「……そうかも知れませんね」
「曇りの無い目で、物事を判断なさいます様に。増長する事は言う迄も無く悪手ですが、卑下する事も同じ位、宜しい事では有りません。
それが、結果的には、貴方のお仕えする方の為にもなると存じます」
家令は表情一つ変えず、音も立てずに部屋をぐるっと歩きながら、言葉を続けた。
「ご自分の事をよくご覧になった上で、よくお考えになって、よくお話し合いになる事ですな。これは、貴方がスグリ様を助けてくださった事への御礼と御詫びの意味も込めた助言でも有り、私からの心ばかりの快気祝いでも御座います。宜しければ、お心にお納め下さい……くれぐれも、ご無理なさいませぬ様に」
クロウはそう言うと、何も答えねぇ俺にお辞儀を残して、静かに部屋を出て行った。
【暫定的に「お嬢様の憂鬱」に続く】