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ビスカスくんの下ネタ日記(くすくす姫後日談サイドストーリー)
第12章 猿と刃物は使い様です
●月●日

「こんちはー。お邪魔しやーす」

 俺は今日、サクナ様の屋敷にやって来た。
 お嬢様のお供じゃ無ぇぞ。お嬢様は御従兄弟様との見合いの為に、仕事はお休みされてるからな。
 俺が玄関で呼ばわると、クロウが扉を開けてくれた。

「貴方でしたか。いらっしゃいませ」
「へえ、お陰様で。あん時ぁお世話になりやした」
クロウに挨拶していたら、サクナ様がひょいと顔を出された。

「お、ビスカスか。調子はどうだ」
「ええ、まあ、ぼちぼちでさぁ。本日は、御礼に参りやした」

 今日、この家は休みの筈だ。お忙しい様だったら出直そうかと思ってたんだが、サクナ様ぁお忙しくは無かった様で、歓迎して下すった。
 居間で茶をご馳走になったんだが。
 屋敷の中ぁ、どことなく、火が消えた様だった。
 スグリ様がお戻りになっちまったら、なんだか寂しい屋敷になったね。元々こんなんだったんだけどな。女の使用人が居るだけ多少はマシな筈なんだが。
 茶を飲んでると、「ビスカスさん!!」って、ウサギが顔を出しそうな気がするねー。裏表の無ぇ、満面の笑顔。想像だけでも和みまさぁね。
 きっとサクナ様ぁ、ウサギが居なくて暇なんだね。だから俺を引っ張り込んで茶ぁしてんだね、分かりやす。

「わざわざ済まねぇな。改めて来てくれなくても良かったんだぞ?」
「いやー、わざわざ来ねぇと、来る機会も有りやせんし」

 俺ぁ今お嬢様付きを離れてるし、そもそもお嬢様がここの仕事を休んでる。

「今日、休みですよね?何なさってたんで?」

 さっきからなんとなく、いーい匂いがしやす。こりゃあ、何かお作りになってたね。

「ああ。干し果物を、ちょっとな」
「へー!あんな簡単なもんも、お作りになるんで?」

 サクナ様が作るなぁ、大抵は、作るのが難しいもんか、貴重なもんか、新しく製品にする為の試作品かだ。
 干し果物なんざ、難しいもんじゃねえ。貴重でもねーし、新製品なんかじゃ絶対無えだろ。

「売り物じゃ無ぇよ。スグリんとこに届ける分だ」
「あー、なるほど」

 難しくも貴重でも新しくも無ぇけどお作りになるもんが、もう一つ有った。
 特別な納めもんだ。
 簡単でもサクナ様が作ったもんは、他の奴の作ったもんたぁ、違いますからねー。何が違うか分からねーけど、確かに違う。それが天才の所以だね……ん?
 俺は、何かが引っかかった。
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