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写性 …SHASEI…
第2章 生い立ち
しかも、二人の中では親に知られずに恋仲であると思っていたのに、両家ともに知る事実で、
むしろ、そうなるように仕組まれていたということで、僕が沙織の実家の商社に入らなければ、逆に二人の交際は認めないとまで言われる。
すぐさま沙織にも同じ話がされる。
翌日には、沙織から、
『優(ゆう)君、美大に進みなよ。そして絵描きになって』
と言われたのだ。
僕は卑怯な男だった。結局、美大に進み、しかも遠方の大学に行き両家から離れた。
最終的には、卒業を伸ばして、また、結論を出さずに逃げた。
でも、それは許されず、沙織は別の男と見合いをさせられて、結婚する。
僕はそれを招待状で知らされた。
沙織と会うことも話すことも許されずに…
沙織と絵を選びきれず、曖昧にした結果だった。
それからは、絵に没頭した。実家の家業を当てにするなどという考えも捨てた。
僕は秋の美術展に向けて作品を手掛けた。
沙織の人生を、結婚という女の幸せを奪ってしまったのは僕だ。