この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
写性 …SHASEI…
第2章 生い立ち
子供の性別が分かり、名前を考えようというと、
沙織は生まれて顔を見てから決めたいと言った。
今から思えば、自分の命の危機を感じ、目標を先延ばしにして、ギリギリまで頑張っていたのだと思う。
寒い冬が終わり、春になる。体調も良くなっていくだろう。
そんな時に予定日よりだいぶ早くに破水してしまう。病院に着きそのままストレッチャーで分娩室に運ばれた。
無知な僕には、待たされる時間が長いのか普通なのかも分からなかった。
赤ちゃんの産声が聞こえると同時に、慌ただしい感じになる。
ナースに呼ばれて分娩室に入るように言われた。
沙織の胸に赤ちゃんが乗せられていた。
生まれたんだ…
でも部屋の中の様子は緊迫していて、沙織には点滴が繋がれ、酸素マスクをしている。
心電図の機械音は警戒を伝えるような感じがする。
ナースに沙織の顔の近くに連れていかれると、
僕を見つけ微笑む沙織が、酸素マスクを外す。
「ゆう君…この子をよろしくね。」
言い終えると、微笑みながら瞼を閉じた。
「沙織?」
だらんと下がる酸素マスクを持つ手を握る。