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第1章 目覚めのブルー

彼にそう言いつつも、その答えは分かっていた。

わたしが中学生の時、大好きだった父が交通事故で亡くなった。父のせいではない。会社から帰宅する途中で交差点を渡っていたら、赤信号を無視して猛スピードで突っ込んできたトラックに跳ねられてしまったのだ。即死だったらしい。

母と一緒に駆けつけた病院のベッドでわたし達を沈黙のうちに迎えた父は、顔に白い布が掛けられていた。

母の恐ろしい叫び声。消毒液のツンとくる匂い。モゴモゴ聞き取れないことを言っている周囲の大人たち。多分それはお悔やみの言葉だったのだろう。

それら全部が現実感を欠いていて他人事のようだった。わたしは茫然と突っ立ったまま、ベッドの上の物言わぬ体を見ていた。わたしにはどうしてもそれが父には見えなかった。

だってその朝、行ってきますと挨拶したわたしに気をつけるんだぞと言ってくれて、何に気をつけるのとふざけて聞いたら、変な大人や車に気をつけるんだよと笑いながら言った父が・・お父さんが・・・そんな馬鹿なことあるはずがない、そう思った。