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愛は奪うもの。故に我は貴女を奪う。
第1章 寂しい体
「わたしのことが?何なの?優しいところ見せれば弱ってるわたしをモノにできるとでも思ったの?」

「違うんです」

「お生憎さま。そんなお手軽な女じゃないわ!」美緒は椅子を蹴って立ち上がった。他の客が驚いて注目している。

「美緒さん、聞いてください」

「美緒、美緒と馴れ馴れしく呼ぶんじゃない!何なの君。わたしの男気取りなわけ?」

「すみません」

「帰る!」美緒は財布から適当に一万札を取り出してテーブルに叩きつけた。そして呆気にとられている槙野の頬に冷たい指先でそっと触れ、静かに言った。

「二度と美緒なんて呼ばないで」

そしてサッと踵を返しカツカツとヒールの音も高く足早に出口に向かう。我に返った槙野は舌打ちして、会計をするために急いで店員を呼んだ。しかし勘定を済ませ店を飛び出した時には美緒の姿はとっくに消えていた。
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