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愛は奪うもの。故に我は貴女を奪う。
第1章 寂しい体
真っ直ぐに帰る気がせず、美緒は駅に背を向けゆっくり歩いて街へと戻ってきた。目についたカフェに入り、ブレンドを注文してから窓際のカウンターに座る。日が沈んだ窓の外はすでに夜の景色に変わり、街にオレンジ色の灯りがともっていた。

コーヒーを飲みながら、隣の椅子に置いたショルダーバッグからスマホを取り出し着信履歴を確認する。でも何もなかった。彼からのメールもない。アプリを起動して彼にメールを打とうとした指が止まり、所在無げに宙を漂う。

何と書けばいいんだろう。"次はいつ会えるの"なんて文章ぐらいしか浮かばない。いつも次へと先送りするだけのあなたとの関係。前に進むわけでもなく後ろに下がるわけでもなく、会っても今を消費しているだけで何も変わらない日々。

わたしの"今"が擦り切れてゆく。ああ、何だか寂しい・・・。
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