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感情のない世界 // 更新される景色
第4章 を
君が真っ先に、デリートするよう命じた記憶──。
君自身が最も忘れたくて、なのに、どうしても忘れられない記憶。
僕だけが忘れたつもりになっていたなんて卑怯だね。ごめんね…本当に。
「……ね…ぇ…、…ねぇ」
ふと前を見ると、君が何か喋っていた。
僕は耳を塞いでいた手を離して、その言葉を聞いた。
「……っ…どうしたんだい?」
「お願いがあるの」
「…そう か。何でも、聞くよ」
僕が僕でいる間の、最後の願い。
全力で叶えてあげたいと思った。
今の僕にその力が残っているかは、わからないが。