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月下の幻影
第1章 月下の幻影

それからどのぐらい経った頃だろう。

真琴は相変わらず、漆黒の海をじっと見つめていた。






“……けて”


最初は幻聴かと思った。



“す、けて……”


しかしその声は────


“たすけて……”


段々と大きくなり────


“たすけて……!”


何故か、真琴の耳に直接響いてくる。



真琴ははっとして、あたりをきょろきょろと見渡した。

「えっ……?」

彼女は“それ”を見つけた瞬間、目を疑った。

真琴が立つ砂浜から数十メートル先────

海の波にとらわれ、ばしゃばしゃともがく子供がいる。

先程までは確かに……真琴以外誰もいなかったはずの浜辺と海に……


────何で……子供がいるの?


“たすけて……! たすけて……!!”

いや、今はそんなこと考えている場合ではない。すぐに助けなければ。

真琴は子供の溺れる方へとすぐさま駆け出した。

しかし、急に後ろから誰かに腕を捕まれ、進めなくなってしまう。

真琴はびっくりして振り返った。

何故かそこには、一人の青年が立っている。
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