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月下の幻影
第1章 月下の幻影
「行っては駄目だ……!!」
「っ、あなた……」
子供に続いて、この青年も一体どこから現れたのか。いや、やはり今はそんなことを問い詰めている暇はない。
「だってあそこで溺れてるのよ! 助けないと死んじゃうわ!!」
「駄目だ! 行かせない!」
青年は深刻な表情をして、子供を助けようと海に飛び込もうとする真琴を説得した。
「あの子供を……よく見るんだ!」
「え?」
「ほら……」
真琴はそろそろと怯えながら、もう一度溺れている子供を見やった。
波にさらわれ、今にも死にかけているその男の子は
青白い顔をして……にやあ、と笑っている。
“……たすけてよ、おねえさん。
さぁ……こっちへおいで……?”
真琴は途端に恐怖で足が竦んだ。
「な、なんで……笑ってるの……」
がくがくと震え怯える真琴。青年はそんな彼女を落ち着かせようと、肩を引き寄せ、そっと背中を撫でる。
「あの子供は……昔この海で溺れて亡くなったんだ」
「な、亡くなった……?」