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月下の幻影
第1章 月下の幻影
「あの男の子は……君みたいに夜ここにやってくる人間を、海に引きずり込む……魔物だよ」
「ま、魔物……?」
“夜の海には、魔物がいるから……気をつけて”
真琴の脳裏に、あのタクシーの運転手の意味深な言葉が過(よぎ)った。
「ほら……見てごらん」
「え……?」
青年は子供がいた方を指差した。が、そこにはもう誰もいなかった。
「う、うそ……」
真琴は我が目を疑った。信じられない気持ちだった。
「……安心していい。もう、今日は出てこないからね」
青年が優しく話しかける横で、真琴は放心状態に陥っていた。
心臓と頭がずきずきと痛い。息もままならない。
真琴は目の当たりにした恐怖体験に、頭の整理が全く追いつかなかった。