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月下の幻影
第1章 月下の幻影
「なんであのとき……未来をちゃんと引き止めなかったのか……ずっとずっと、後悔してる」
鉛玉が胸の底にずっしりと溜まっているような感覚。それは、後悔と自責の念が積もりに積もったもの。
「み、未来が……正義感の強い性格だって、わかってたはずなのに」
弟が道路に飛び出した時、咄嗟に真琴自身も弟に向かって手を伸ばした。
しかし、真琴の手は、弟には届かなかった。
「い、今でも……夢に見るの……っ。み、未来の身体が……車にぺしゃんこにされる瞬間」
真琴の目から、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。
「わ、わたしが犠牲になってでも、未来を守ってあげなきゃいけなかったのに……っ!」
たとえ自分が死んだとしても────彼に生きててほしかった。彼だけでも、どうか……助かってほしかった。
「真琴……」
「わたしがっ……」
道路へ飛び出していく弟の姿が、今でも目に焼き付いて離れない。