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月下の幻影
第1章 月下の幻影
翌日────
寝起きの身体は、何か憑き物が落ちたように軽く、ここのところ優れなかった体調も抜群に良くなっていた。
「……」
朝食を済ませると、荷物を纏め、受付で精算する。
「本当に帰っちゃうの?」
女将は名残惜しそうだった。
「はい。本当は……もう何泊かする予定だったんですけど、もうそろそろ、家に戻ろうかなって……」
「……そう。そういえば、長いこと一人旅してたって言ってたわよね」
真琴は柔い笑みを浮かべた。
「色々……整理がついたので、きちんと向き合おうかと思って」
「ならしょうがないわね。待っててね、今、タクシー呼んであげるから」
「ありがとうございます」
旅館の出口を抜け、表の通りに出る。
ポケットに仕舞っていたスマートフォンがぶるぶると震え出した。
着信元は、確認しなくても分かった。