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月下の幻影
第1章 月下の幻影
風呂を済ませ部屋に戻ると、真琴はあらかじめ敷いておいた布団にダイブした。
「ふぃ〜っ」
身体の重みが、布団から床へと伝わっていくように、 じんわりと、じんわりと布団に吸い込まれゆくような気がする。
もうこうなると動けない。今日はこのまま寝落ちパターンだ。
ただ……
「っ、のど……乾いた」
真琴はリュックを引き寄せると、ミネラルウォーターを取り出した。が、残念なことに、ペットボトルの中身は空っぽだった。
「げッ……」
どうしても喉の乾きに堪えられなかった真琴は、風呂上がりのだるい身体をどうにか持ち上げ、部屋を出た。
従業員に尋ねると、旅館には自動販売機がない、と言われ、代わりにいちばん近いコンビニを教えてもらった。
外へ出ると、途端に柔い潮風が真琴の頬をかすめた。
いつの間にか日は暮れ、空にはぽっかりと丸い月が浮かんでいる。
コンビニまでは、歩いて10分。のんびりと行くことにしよう。