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50センチの距離
第15章 フローズン・マルガリータ Le bar ombrage
「…?」

「あちらのお客様からです。」

「へ?」

高塚さんが示した方向は空席。
キョトンとした私に、

「ウソ。一回言ってみたかっただけ。ウチのお客さんそんなキザなことしてくれないんだもん。コレは、俺からのサービス。」

「…良いんですか…?」

「最近ハマって練習してんの。フローズンカクテル。コレは、フローズンマルガリータ。カクテルの意味は、元気を出して。」

シャーベット状のカクテル。
グラスのステムを持って、ひと口含む。
グラスの縁にお塩がついてるから、少ししょっぱい。
でもすぐに、冷たいカクテルが洗い流してくれる感じ。あと口は柑橘系のさっぱりした甘さ。冷たいドリンクが、口の中で溶けてゆっくりと喉を通って行く。

元気を出して…か。

いつも元気でキラキラしてた私が好き、って藤本くんも言ってたな…私だって…元気じゃない時もあるんだよ…

でも
事情を聞かなくても、明らかに落ち込んでる私に、浮上するきっかけをくれるような、高塚さんの絶妙な心遣い。

フローズンマルガリータ、元気を出して…

心の中で何度も唱えながら、ゆっくりとその一杯を飲み干した。


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