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50センチの距離
第15章 フローズン・マルガリータ Le bar ombrage
割り勘で会計を済ませ、店の前で別れたけど、そのまま独りで家に帰る気にもなれなくて。気付いたら私の足は、オンブラージュに向かっていた。

ご飯は駅の近くのカフェだったから、オンブラージュへは逆戻りになるんだけど。

ドアを開けると、カラン…と控えめなドアベルの音がした。

「いらっしゃいませ。」

店内は満席ではなくて。私は無言で空いた席に座った。

いつもなら、席に着くなりメニューを広げて、何食べよっかなー、とか、何飲もっかなぁー、とひとりごちながらワクワクソワソワしてるけど、今日はそんな気にもなれなかった。
ただ、独りになりたくなかっただけ。
お腹もいっぱいだし、飲みたいものも食べたいものも思いつかなかった。

「…野田さん、なんかあった? 元気ないけど…」

「ちょっと…」

高塚さんはそれ以上何も言わずに、他のお客さんからのオーダーを受けたり、料理を作ったりしている。

目の前に置かれたお冷をひと口飲んだ時、コトッと音がして、小さなカクテルグラスが置かれた。
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