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50センチの距離
第18章 アッラナポリターナ ー追憶ー
イタリア語はおろか、英語もろくに話せないのに、バイトで貯めた金を握って、単身イタリアへ。
今考えると無謀だったな、と呆れるばかりだ。
世間知らずの上に無知と短慮の三重苦。ま、そんな怖いもの知らずなところも若さ故と言ってしまえばそれまでか。

とりあえず、イタリアのガイドブックを見ながら、ツアーで誰かが引率してくれる訳でもないから、現地であちこち動くのはやめよう、と目的地を絞る。他の街に比べて、やたら食い物の写真が多くて、しかもどれも美味そうに見えたからナポリに行こうと決めた。

パスポートだけは母親に言われて母親のパンストで腹に巻いて行ったけど、初日に持ち金の殆どをリラに両替して、ワンショルダーのバッグに入れて斜めがけにした。あとホントに失くした時のための保険、でスーツケースの底に日本円で5万と、航空チケット代だけ入れていた。5万は使うつもりのない、ホントにただの保険だった。なのにそれは、初日に俺の全財産になる…
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