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50センチの距離
第18章 アッラナポリターナ ー追憶ー
残金5万で何日過ごせるんだろう…現地の美味いもん食うために来たのに、ホテル代差っ引いたらメシなんか食えんのか?
季節的に野宿も行けなくはないか…?
イヤでもスリがいんだぞ?アイツらだけとは限らんし…万が一スーツケースまでイかれたら帰りのチケット代すらなくなるじゃねぇか…
考えてもどうしたらいいのか全く解らず、頭を抱え込んだ時、頭上からイタリア語が聞こえた。
俺に向かって話しかけてると思わなかったから、しばらくは反応しなかった。だけど声の主は何度か話しかけてきて。

「…すみません…イタリア語はわかりません…」

俺は頭を抱え込んだままかぶりを振った。
そんな俺の耳に飛び込んできたのは…

「あら、あなたニッポン人なの?」

日本語だった。俺は思わずガバッと頭を振り上げた。

「日本語わかるんですか⁉︎」

「…少しだけね。母がニッポン人なの。ニッポンには行ったことないけど。」

声の主は、優しそうなおばさんだった。
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